【複雑過ぎて混迷極まる】
時間逆行能力者達が全世界を逆行させる"アルゴリズム"を巡って戦う話
未来から過去へ、結果から原因へ、覆水から盆へ、帰納法を穿って解釈したようなメメントのテーマとか発想に量子物理学用語を盛り込んだような作品。その分難易度も急騰しており、ノーラン映画の中では一番難しいかも。初見で理解出来たら超秀才だわ。
まあ全く理解できてない私文野郎でも普通に楽しめるのがノーランの凄いところ。USJの乗り物を感じさせるような爆速爆音の超スペクタクル展開で、訳分かんねーままヒャッハーできてしまう。
当然、ノーランはそれだけでは留まらない。彼がこだわる「時間」の概念の追求の果てとも言える今作は、論理考証も明確。複雑過ぎて混迷極まるシーンが連続するも、また見たいと思わせる奥深さと正確さも確かに存在する。
それにこれは2回チケットを買わせるマーケティング的算段だけではなく、撮影が終わっているにも関わらず流行りの謎の伝○病の所為で映画業界が"敢えて"公開を遅らせる中、"敢えて"正規に踏み切ることで相対的な"逆行"を演出している。時間とは相対的なもの…まさに相対性理論としてテーマに通づる。(※考えすぎ)
だが、ノーランファンから言わせてみると微妙なポイントもある。インターステラーやインセプションで魅せた、劇場のシートがぶっ壊れて映写室に顔面から突っ込むほどの衝撃はなかった。
今作最大の魅せ場である順行主人公&逆行主人公vs順行敵・逆行敵のいくさが、カーチェイスシーン以外分かりづらいだけで微妙。結局は娯楽映画なんだから、論理面だけではなく論理とビジュアルの合わせ技のスルメ映画にして欲しかった。
まあ論理面での製作能力が落ちたわけでもなさそうだし、毎回インターステラー並のバケモン級を期待するのも贅沢過ぎる。次回作では映写室に突っ込みたい。