酒ポテト

ひとよの酒ポテトのネタバレレビュー・内容・結末

ひとよ(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

タイトル『ひとよ』を『人よ』と勘違いして見終わってしまった笑。『一夜』か、いい映画だとしみじみ。脚本、キャストどれも良かった。
雄二の雑誌記事にもある通り、母が父を殺した後の稲村家は、体裁を保っただけの見かけだけの家族の様を呈していた。彼がずっと使っているボイスレコーダーが母からの贈り物だと知ってからは、彼も実は母親のことを想っているんだろうと確信した。個人的には吃音の長男がしっかりしていて、家族が完全に崩壊するのを瀬戸際で守っているように見えて感動。しかし最も立派で最も愛に溢れているのは母親だというのがこの作品を見てより感じた。田中裕子さん演じる母親の「私が謝ったら、子供たちが迷子になってしまう」というセリフからは、どうしても子供たちに自由になって欲しかったという切なる願いが感じられて心に響いた。
佐々木蔵之介演じる家族が稲村家と決定的に違う点をあげるとすれば、それは彼は捨てられた側だということである。子供は母方が育てており、父親のせいで闇の仕事に手を染めざるを得なくなっている。元ヤクザの、捨てられた父親が今更息子に愛情を注ごうとしても上手くいかないのはなんとも残酷でもあると感じた。
母は母である、どんなときも1番愛情をもって子供のことを考えているのは母親である。たとえその事が子供たちに伝わらなくても、自分の身に危険が及んでも、子供たちには自由に生きて欲しい、なんにだって成って欲しい。そう願うのが母親なんだと再認識した。自分の子は自分だけの特別な子である、だからその子さえ幸せであれば周りの目なんて気にならないのだろう。他人から見たら親子愛なんて、さして同情できるようなものでもないが、それでも構わないのだと。
キャストが素晴らしく、田中裕子さんは殿堂入りで、鈴木亮平、佐藤健、松岡茉優、どなたも良い演技をしていた。特に鈴木亮平は吃音の長男を見事に演じきっていると思ったし、佐藤健もあんまり好きじゃなかったが、『護られなかった者たちへ』も同様、無骨ながら真っ直ぐな演技が心に刺さった。後大悟はなんで出てきた?笑。とにかく、親子愛をしみじみと再認識できるいい作品だった。
酒ポテト

酒ポテト