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ひとよのkuのネタバレレビュー・内容・結末

ひとよ(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

白石監督の感情の描き方最強じゃないですか。繊細。人が隠したくなるような醜い部分の感情をとっても繊細に描いている。誰だって醜い感情を持っているし、それぞれがそれぞれの地獄を持ってる。

虐待する父と、虐待から子供を守るために殺人を犯した母。"悪"とは何なのか。感情論で語ってしまえば虐待する父親が100%の悪で、罪を犯してまでも子供を守ろうとしたは母はヒーローで。でも法はそれを認めない。法に感情はないので、ただ人を殺した事実だけがそこに残る。だからこそ母親も紛れもない悪で。感情と理性がぶつかり合う。殺人の背景を知った以上、感情が生まれてしまった。悪か正義かを判断するのにこうも感情は役に立たないかと思い知らされる。感情だけで全てを判断出来れば苦しまずに済んだかもしれない。今の辛い人生は父を殺した母のせいだと糾弾出来ればどんなに楽か。母が父から救ってくれたという事実から目を背けられればどんなに楽か。母を恨むことが出来てしまえば、全て母のせいだと断定出来ればどんなに楽か。綺麗事で覆い尽くせない醜い感情が燻る。次男は誰よりも母が父から救ってくれた事実を理解していた。救われた。救ってくれた。けれど世間はそれを否定する。

複雑性PTSDの症状が分かりやすく描かれてたと思います。作中で兄妹三人とも父親を尊敬してないとはっきりと分かる表現がなされている割には兄妹それぞれから父親の影が見える。長女がDV男と付き合っていたことや、次男の易怒性、長男の暴力。15年経った今でも彼等から離れていかないんだなぁと。次男の易怒性が強くて錯覚しそうになるけど、唯一長男が感情をコントロール出来なくて暴力してしまう。次男は飛び蹴りしたりしてたけど基本的に怒鳴るだけで手を出してはいなかった気がする。記憶が間違ってなければ。あの家族にはこれからは家族みんなでトラウマと向き合っていけるようになっていけたらいいなと思いました。
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