シュローダー

デッド・ドント・ダイのシュローダーのレビュー・感想・評価

デッド・ドント・ダイ(2019年製作の映画)
4.8
去年公開された珍作「屍人荘の殺人」に非常に近いトンデモ映画だが、これを撮ったのがジムジャームッシュということに、この映画の全てがある。この映画は、ビルマーレイ、アダムドライバー、ティルダスウィントン、スティーヴブシェミ、イギーポップ、ウータンクランのレザ、などなど、ジャームッシュ作品に出たことのある俳優たちが一から十までふざけ倒したとんでもない同窓会映画である。ジャームッシュ映画特有のオフビートな笑いも今回は行き着くところまで行ってしまう。劇映画の枠を破壊してしまうのだ。それも「ストレンジャーザンパラダイス」の時に行った「でっち上げて作り上げた物語性の破壊」という意味ではなく、デッドプールもかぐやの何でもありっぷり。アダムドライバーのスターウォーズネタにも大爆笑。クリーヴランドから来る男2人に女1人の若者の一団は「ストレンジャーザンパラダイス」だし、少年院という「牢屋」から脱出する3人組は「ダウンバイロー」日本刀を振り回す欧米人は「ゴーストドッグ」と、ジャームッシュの過去作を意図的にオマージュしたディテールも盛り沢山。そしてそんなギャグと同時に、ジョージロメロが最初に描いた「ゾンビ」の味わいを豊潤に匂わせる、「ゾンビ=物質主義に塗れたバカ」という痛烈な皮肉が、奇妙な同居を見せる。そして、「屍人荘の殺人」を最も如実に感じたのは、ラストである。観た人ならわかる「えぇ!? 嘘でしょ!?」というとんでもないオチ。僕は思わず椅子からズッコケて大爆笑してしまった。人によっては「金返せ!」となるかもしれないふざけ切った映画であるが、僕はこういうホヤのような珍味は大好物。大変大笑いさせてもらった映画でした。