なお

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのなおのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

二回連続で観賞することをお薦めします。とても練り込まれた作品です。フラグとブラフが多数入り乱れ、意味のないセリフやシーンが一つもないのではないかと思えます。見つけたフラグやブラフを誰かと話して、自分が見逃したフラグを見つけたくなるようなそんな映画です。
■ストーリー
一度目は謎解きとして観賞。謎解きにしては探偵がいないし、早めにネタばらしされるのでとても拍子抜けしました。
二度目は復讐劇として観賞。とても楽しめました。
「インフェルノ」の翻訳の際に翻訳家を地下室に閉じ込めた実際の話への批判はあまり鼻につきません。
復讐劇が終わったラストに対してそれまでの伏線が心に染みて応援歌のようでとても泣けました。

ここからはネタばらし。観賞された方だけご覧下さい。見つけたフラグとブラフを一部紹介。

■フラグ
▼人物のフラグ
・出版社のエリック
最初のセリフ「いつも種明かしをせがんだ。必ず目的を達した」→種明かしをそのまま信じる人物。→犯人探しの時に自分で考えず言われた言葉のまま行動する性格を示唆?
・エレーヌ デンマーク語の翻訳家
今後の展開を話し合うセリフ「レベッカがウイルスを作成。夫を実験台にして殺される」→平凡と他の翻訳家に批判→最終的に自分が才能がないことを認める一つの原因?
▼小道具のフラグ
・本の題名「Deadalus」
ラテン語の「聡明な働き手」なら出版社のエリックや、「インフェルノ」の出版社への批判。イカロスの父の意味ならジョルジュ先生の悲しみを示唆?深読みしすぎか。
■ブラフ
・チェンがPCの鍵を触る
・ダリオが包丁を持つ
・ジョルジュ先生が出版社のエリックへのセリフ「誰よりも先に結末を知って欲しい」
→結末は「彼を殺したのは彼だ。彼が必死で追い続けた男。毎朝気づくことなく向き合っていた顔。鏡で自分を見るときに」=二重人格の自分が殺した→特にエリックへの示唆はなさそう?
■分からなかったシーン
・秘書のローズマリーを決断させた写真。出版会見からこの作戦を立てていたという答え合わせ?
・共犯者への勧誘シーン
「聡明な働き手」という意味ならポルトガル語のデルマはあまり当てはまらないような…。不遇な翻訳家で纏めている?でも勧誘にはそれぞれへの言葉が全体的に弱い気がします。
■二度見れば楽しめるフラグ
・「赤面するものは罪人」=カテリーナのことではなくジョルジュ先生への示唆?
・カテリーナへの見舞時に本を見ずにラストシーンを音読
・鞄を取り替える時に見張りのドイツ語の翻訳家が下をみており鞄を見ていない&鞄がエリックの足の間にある
・最初の出版会見にアレックスがいる
・最初のアレックスのセリフが嘘ばかり
・最初のシーンで「書物を焼くものは、早晩、人間を焼くようになる」を想定させます。まぁ、順番は逆でした。とはいえ、予想が当たる事で観客を楽しませてくれます。
■メモってしまったセリフ
・「ページを開けば世界が溢れ出す。物語は全てを圧倒し私たちの心で永遠に行き続ける」
・三桁でよく使用される番号
666 911 365 069 001 777
123 321 567 765
縁起が悪そうな数字や性的な数字が入っている事に驚き。
■一番オススメのフラグ
「僕はいつも『失われた時を求めて』の本に救われる」が複数のシーンで重要なポイントを占めている。
特に復讐が終わった後に残るのは「失われた時を求めて」と同様にジョルジュ先生との幼少期の夏の思い出ということか。
「風が吹いた。生きようと試みるべきだ」のフラグとともに最後のシーンにとても刺さりました。
なお

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