ランベール・ウィルソンの９人組手
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フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時発売に向けて、9人の翻訳家が集められた。翻訳家たちは外部との接触を一切禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく。しかしある夜、出版社社長のもとに「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。
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退屈でも冗長でもないのに、観てると眠くなる映画がある。
リズム感が電車の揺れに似てるのか、ランベール・ウィルソンの優雅なフランス語に心地よくなって何度も寝そうになった。
端的に「ユージュアル・サスペクツ」によく似た話で、密室での二人の会話から回想される「なぜやったのか？」系サスペンス。ある会話を通じて事件の全貌が徐々に明らかになってく過程が気持ちいい。
劇中『透明人間』とも称される翻訳家たちが物語を通じて、人生を取り返す話でもあったような？
（日本だと現社者と同じく翻訳者の名前も表紙に載るけど、海外だと事情が違うのかしら？）
物語の中盤くらいで犯人が明かになってしまうので、犯人捜しより犯行の方法や動機を探るのがキモ。拝金主義が跋扈する世の中で、ペンや言葉の力は健在なのかって問いかける話でもある。
犯人がせしめた金額8000万ユーロ。日本円にしたら100億円近くてビビる。会社のお金に個人の資産を足して払ったにしろ、あの社長どんだけ資産家だったのか！ 野郎、よほどの守銭奴。金に汚い上に日常的なパワハラ・モラハラ野郎なので、酷い目にあっても可哀想に思えない。悪役かくあるべし、と思えるほど近年珍しいレベルのクズ。
ことほど左様に、魅力的な悪役っぷりを発揮して実質的に物語の中心にいて推進力だったのはエリック社長。特段セクハラするわけでもないのに、前述のモラハラっぷりもあってかエロじじい感もハンパなし。ランベール・ウィルソンさすが！ １人で９人の翻訳家と対峙しちゃう胆力もすごい。戦隊ヒーローだってせいぜい１対５なのに！
アレックスを演じたアレックス・ロウザー。ああ、ややこしい。Netflix「ブラックミラー」S3.EP3『秘密』で、PCでエロ動画見ながら自家発電してたら、うっかり何者かにPCがハッキングされ痴態を録画され、脅迫される少年役で俺にお馴染み。
オルガ・キュリレンコは相変わらずの圧倒的な美人ぷり。ミステリアスな佇まいで物語に花を添える。ほんと添えるだけ。
社長の子分ローズマリーを演じたサラ・ジドローが気になった。「クリミナル：フランス編」で最近見かけたばかり。優等生ぽい見た目で大人しく、大きな声で命令されると拒否できない気の弱そうな面持ちが好き。彼女がある臨界点を超えてとる行動が、今作イチのカタルシス。
難癖をつけるなら、最後まで『デダリュス』って本がどんな内容なのか分からなくてもやもやする。特にカテリーナがヒロインに心酔してるのはいいけど、何がどう彼女をヒロインと同一視させてしまうのかちっとも分からなかった（寝てて見逃した可能性）
『デダリュス』がどういう意味かを調べてもよく分からず🤔 一番近いのはギリシャ神話のダイダロス（イカロスの父）で、名工ダイダロスを翻訳家に重ねてるんだろか。「聡明な働き手」の意味もあって作家や翻訳家のことでもあろうし、犯行の鮮やかさを暗示してるようにも思える。
中盤以降は主犯格を除いて翻訳家たちがほぼ空気。一応の活躍は用意されているものの、急に物語から消えてしまう。「オリエント急行殺人事件」を引用するなら、もうちょっと登場人物たちの絡み合いが欲しかった。
世界的なヒットシリーズ、ダン・ブラウンのロバート・ラングドンシリーズの４作目「インフェルノ」発刊に際して、実際に翻訳家お2ヶ月地下室に缶詰にしたエピソードが基。そのせいなのか、キャスト陣にラングドンシリーズ所縁の人も。ランベール・ウイルソンは「ダヴィンチ・コード」のスイス銀行頭取役。卑近な小悪党っぷりがサスガ！
デンマーク語版の翻訳家演じたシセ・バベット・クヌッセンは映画版「インフェルノ」でWHO事務局長エリザベス・シンスキーを演じてる。他にも調べれば所縁あるキャストやスタッフがいそうだ。
音楽は日本人の三宅純。古くは大友克洋「MEMORIES」の「最臭兵器」から、近年だと蜷川実花監督「人間失格」や「嘘はフィクサーの始まり」の劇伴を担当されている。映画劇伴で日本人が海外で活躍している人がいるのを初めて知った。今作のゴージャスさと不穏さを併せ持った優美な劇伴は素晴らしかった！
13本目
