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9人の翻訳家 囚われたベストセラーのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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厳重な機密保持のため、屋敷のシェルターに閉じ込められた各国9人の翻訳家。如何にもクリスティ風な設定で始まるミステリーは、殺人ではなく大人気シリーズ小説完結巻の流出事件。思わせぶりな登場人物、思わせぶりな謎、思わせぶりな作家。そそくさとエピソードを並べながら、犯人探しは何度もツイストしていく。文学は人を殺し、人を生かす。
うーん…とりあえず、翻訳業を軽んじてるような所が気にかかる。翻訳だってれっきとしたクリエイティヴ作業だろう。勿論そこは出版社アングストロームの軽蔑すべき点として示されてるのだけど、映画自体もどうなの。あの環境での仕事も無理があるし。
同時に、肝心の作品「デダリュス」が劇中で言われるほどの大傑作とも思えない。架空の小説なんだから観客に内容をワクワク期待させてほしいのだが、登場人物が褒めちぎって引用するほど空々しく陳腐になってしまった。「デダリュス」のネタバレよりも『オリエント急行殺人事件』のネタバレかます方がよほど問題あるんでは(そもそも本作がオリエント急行オマージュなんだけど)。
翻訳家たちも背景文化言葉の違いがあまり面白く活かされず。9人の間にドラマや緊張感もなく、ランベール・ウィルソンは最初から悪役だ。トリックや謎解きに翻弄されはするけど、演出自体は新鮮味ないしカタルシスがないので、ちょっと頭でっかちなミステリーだったな。
レジス・ロワンサル監督で大好きな『タイピスト!』は昭和の別マ少女漫画だったけど、これは白泉社系漫画って感じ。
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