Tai

9人の翻訳家 囚われたベストセラーのTaiのレビュー・感想・評価

3.8
〝それ〟は誰が書いたものなのか。

世界的人気ミステリー小説の第3作目発売に向けて集められた各国9名の翻訳家たち。
翻訳中のネタバレ禁止の為に、外部との一切の連絡を断たれ、軟禁状態での翻訳作業。
そんな中で出版社社長の元に届いたメールには「冒頭の10ページを公開した。残りを公開されたくなければ大金を…」と。
誰も知らないはずの作品が公開され、疑われる翻訳家たち。一体、誰が公開したのか?新作は無事に出版できるのか?

設定が面白そうで、気になっていた作品。
翻訳家という職業にスポットが当たっていたのも興味深かったですね。
読者が目にする文字一つ一つを書いたのは彼らなのに作者ではない。訳すのにおいて選び出される単語によっては文のイメージを変えてしまいかねない非常にデリケートなお仕事です。
でも、どんなにその作品がヒットし評価されようと、彼らが評価されることはそうありません。
古い作品のファンだと「誰の訳版はここの表現がこうで〜」なんて話をしてるのは面白いですけどね。

これは、そんな翻訳家たちのちょっとやるせない立場をベースに、出版界全域にボディブローをかました良作だったんじゃないでしょうか。
人物や状況を把握する前に時間軸や場所が行ったり来たりするので、序盤の脳内整理で若干眠くなりそうだったのがキツかったですが…
さらに、整理を終えるとその情報量から確信とまではいきませんでしたが「アレ?もしかして…」なんて考えていた展開が当たっていたりするので、ミステリーとしてはちょっと弱いかもです(´・ω・)

でも、それ以上に物語が面白かったのでオールOK‼︎
後半の盛り上りはたまらなくドキドキしましたね( ´∀`)b
そもそも脅迫してくる謎の犯人より、脅されてるはずの出版社社長の方が100倍悪人に見える人物なのですが、これが後半を展開させてくれました。
仕事にプライドを持たなくっちゃね!


各国翻訳家の中に日本代表がいなかったのが、ちょびっとだけ残念でした(´・Д・)
Tai

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