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スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼のhamのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

成田凌さんが別格過ぎる。
普通の俳優さんはラブコメや日常に即した演技は上手くても、常軌を逸する非日常の演技が微妙なことが多いけど、彼は逆にそういう演技が光る。絶対街で会いたくない。
白石麻衣さんは本田翼タイプの女優さんな気がする。磨けば磨くほど想像もし得ないほどに化ける。世にも奇妙な物語の怪演ぶりも当時相当な反響があったが、そのときよりも成長している。今後更に良い女優になっていくんだろうなと思った。
序盤は綺麗さに目をとられてしまう程だったが、徐々に"白石麻衣"ではなく"松田美乃里"として見ていた。
はじめの方は濁す加賀谷にイラつく26くらいの女子ね、わかるよ気持ちは、って感じだった。この場面が予告に多く使われているから、舌足らずな彼女の演技に「アイドル使って数字稼ぎか」と一部の方が言ってるのも納得ができる。しかし、彼女の本作の魅力は後半。あの変態ガチムチ野郎は許せないとして、非日常なシーンの間の取り方がすごいうまい。タイミング、空気を読む力がずば抜けている。想像力が非常に強い。ラストの「断る理由がないわ」を棒読みと捉えてしまうのは非常にもったいない。あの言い回しは今までの背景を踏まえた上で完璧だったと思う。二度目のキスの後に加賀谷に腕を回さない点も良い。よくあるラブコメなら回してた。回さない判断が素敵だった。
ただの綺麗なアイドル女優では無いんだと確信できる作品だった。ひとりの女優として今後を期待したい。

千葉雄大さんはこの作品にかけてる部分があるように思えた。他の作品も拝見しているが、気合の入れ具合が桁違いに思えた。可愛い顔立ちで人気だと思っていたが、それだけでなく、俳優として魅力があるのだとわかった。彼は成田凌さんとは逆で、ラブコメや日常を越えた日常にすごく映える役者だからこそ、本作のようなものには真剣に取り組むほど浮いてしまうような感じが開始10分ほどはあったが、撮影が進めば進むほど加賀谷になっていったのが目に見えて分かるし、役に取り組む姿勢がすごく真面目なんだなと思った。いい意味で“俳優さん”ではないし、ただの可愛い俳優で終わらせるのはもったいない。ある程度の知名度を得た今でも向上心を持ち続けることは本当に凄い。ラストの加賀谷と美乃里が初めて会うシーンで走って駆け寄るところは本当に日常を演じさせたら誰も勝てないなと思うほどプロだった。
制作演出の方が千葉雄大さんを可愛い要因だけで起用するのはもったいないぞ!と警告したい。彼は素晴らしい役者だ。

映画自体の展開は日本映画だな、という感じ。時々入る茶々は面白いものもあったけれど、それ絶対要らないとなるシーンも多かった。加賀谷が浦野に助けを乞うために留置所に向かった時の手前のおじさんと警察官の茶番は本当にいらなかった。

この映画に限ったことではないけれど、途中で映画にのめり込めなくなる時間がある。始まりからエンドロールまで世界観にどっぷり浸かれる映画を作ってほしい。演者以外の制作陣の腕なのかな。決して海外のパロディ、オマージュをするべきと言っているわけではなく、より良いものを作っていく意識が欲しいなと思った。現段階ではいい映画だなと思ったけれど、2023年にこの技術力だと日本映画業界の廃れを感じてしまうかもしれない。

広報活動はすごく良かったと思う。
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