バタンキュー

パラサイト 半地下の家族のバタンキューのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

面白かった。食い入るように見てしまった。

この映画を100%楽しみたい人は、レビューなんぞ読まずに今すぐどんな手を使ってでも、予備知識ゼロの状態で観るべきだ。

こういう、呆気にとられて口をあんぐり開けてしまうような作品に出会えたとき、生きててよかったと真剣に思う。

韓国では珍しくないという半地下に住まう家族を中心に描かれるのは、ポン・ジュノ監督作品でなんとなく普遍的な「格差」「嫌悪感」「家」「顔」「雨」。これが本作では手を変え品を変えこれでもかと迫ってくる。

登場人物に悪人は1人もいない。だが冒頭から常に流れつづけるなんとなく嫌な予感。可笑しさの合間に少しずつ挟まれるズレたアングルや会話、そして雨。上手い。半地下の家族がまさにパラサイトしていく前半の流れはテンポがとても良く、一風変わったサクセス・ストーリーを観るようで痛快。

だが、やはり「雨」の日が転換点となる。ある人物がそれまでとは異なる「顔」を見せたとき、それまで描かれた「格差」は意味を変え、「家」の真の姿が見えてくる。そしてそこまでに形無く表現されてきた「嫌悪感」は、凄まじい展開に登場人物を巻き込んでいく。

ポン・ジュノ監督は、一見すると複雑なモチーフや心象や関係性を、くどい説明なく観客の脳裏に刷り込んでくる、シンプルだが複雑に計算されたっぽい映像表現で。本作はいままでのポン・ジュノ監督作品の中でもこういう映画的な特徴がひときわ際立つ作品だと思った。

個人的には、ポン・ジュノ監督×ソン・ガンホといえば「殺人の追憶」が大好きで、韓国映画の不動のマイ・ベストに挙げていたが、同じコンビがその牙城を崩してくれた。