ほのか

パラサイト 半地下の家族のほのかのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3
韓国映画でジャージャー麺見るたびにジャージャー麺って何味なんなんやろ…って思う。インスタント焼きそばみたいな色してるけどソース味…じゃあないんやろうな…あゝいつか食べてみたい韓国のジャージャー麺…。




というお話はおいといて。
なんと"映画力"の高い映画なんだろうと感服せざるを得なかった。観客を笑いとハラハラと戸惑いともやもやのとんでもないジェットコースターに乗せたとみせかけながら実は完璧にバランスの整っている感情の渦に蹴り落とし、その落とされた底にはどうにも"そう"としか見えない役者と、予測を一蹴してくる展開と、感嘆すると同時に悲しくなるほど完璧な対比描写と、欺く気なんてサラサラないなんて顔でサラッとばらまいてくる伏線が広がっていた、ことに終わってから気づくのだからそりゃあ強い。いやはやおみそれしました。
そしてなんとパルムドールらしい映画なんだろう、と。でも最近のパルムドール作品よりはちょっと娯楽の味がする映画だったなあと個人的には思います。なんかちょっと雑なところがあって大味なところは韓国映画らしくてすきなところ。そういうところでGG賞にもウケたんやろうなあと勝手に納得してた。邦画でこう上手いこと社会問題と娯楽を融合させた映画全然思いつかんもんな…。







内容のお話していいですか?ありがとう。ネタバレする気はないけど観てない人は読まないでね。


わたしこの映画で味わうようなハラハラ感がいちばん苦手かもしれない。どんなホラーよりも苦手。この感情、なんかで似たようなの味わったぞ…と思って過去の記憶手繰ってたの、アメリカンアニマルズだった。以下自分の記録より引用。

「中途半端な倫理観、中途半端な計画。何者にもなれない自分への苛立ちと不安と、今の自分以上になる自分への期待。ふわふわしすぎだ…。そのふわふわ感と行き当たりばったりで目に見えて行き詰まって行くのにやめない姿が見てられなくて(以下略)」

あ〜これだ〜。過去のわたし、なかなか表現上手いな。自画自賛がすぎるね、わはは。
でも「何者にもなれない自分への苛立ち」は学生だった彼らには当てはまるけどパラサイトでは当てはまらないな。彼らは彼らとしてちゃんと生活をしていたし、そこには疑いもなにもなかったから。
普段馬鹿にして下に見ている自分たちに騙され、大声で自慢はできないけれど自分たちしかできないようなあの手この手を使って家族総出で貪り尽くそうと集っているんだぞどうだ思い知ったか!と初めは嘲笑っていたのに、見て見ぬ振りをしていた綻びに気付いてしまうと、この家族はどう足掻いても自分たちの遙かなたうえにいるという現実を確認しているに過ぎないことに、言葉にはしないが気づいてしまうけれど、それこそもうどうしようもないことだと二重で見たくなかったことを無理やり見つめ直させられるのが、彼らにはとんでもない苦汁でありひとつだった家族の分岐点になったなあと思います。

ジャージャー麺作ってる時に手はめちゃくちゃ手際よいのに目線が鋭すぎたお母さん、そのうえその目線がカメラの動きに合いまくってて恐ろしく緊迫したシーンなのにそのスピード感がとても美しかった。蹴り落とすシーンも然り。この映画で1.2を争うほどすきな描写だった、あれだけ綺麗に決まるのすごいな、全く。