わこ

パラサイト 半地下の家族のわこのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

映画館を出たあとの日差しが、やけに眩しくて目を細めた。
まるで暗い半地下の、奥深くから出てきたようだった。

韓国映画を見るのは初めてです。
監督のことも、出てくる俳優の名前も知らぬままただ去年訪れた韓国の街を思い出しながら見た。韓国の高級百貨店の裏側には偽物ばかりを売る市場が栄えている。もともとk-popを聴くのが好きな人間だが、何となくほの暗さを感じた。

前半はわりとテンポよく話が進み、これからどう展開するのか、というところで彼らの計画には無い客人により物語が大きく方向を変えていく。前半の軽めのタッチのままでも、コメディ作品として成り立っていたかもしれない。しかし、客人とのインターホン越しの会話から、得たいの知れない恐怖感が始まり何が起こるのだろうか?という困惑と期待に背筋がぞわっとした。
思えば、あの家政婦は二人分ご飯を食べる、という説明があったときにに何の疑問も持たなかった自分の鈍感さを喜ばしく思いたい。

印象的なのは、豪邸の地下に初めて降りていく場面と、大雨の中階段をひたすら駆け降りて下へ下へ、もっと下へと自宅に戻る場面。格差を比喩した階段の描写が分かりやすく面白い。

後半、息子が石を持って地下に行く場面が怖くてまともに目を開けて見られなかった。あのとき、妹が食事を持っていったら違っていたんだろうか。
いや、そもそも母が蹴飛ばしたためにほぼ元家政婦を殺してしまったようなものだったから旦那に襲われるのはどうともならなかったか。
そういえば、何故元家政婦は母の名前を知っていた?その理由はどこかに出てきただろうか。

「金の有無=生活水準の高低≒心の余裕」
本人の心の持ちようもあると思うけど、金と精神状態はほぼ繋がっているんじゃないかと常日頃から考えている身の上、とても考えさせられるものがある。
映画冒頭の彼ら家族の方が、格差を目の当たりにした時より幸せそうに見えたのは私の傲慢だろうか。
人は人と比べたとき、人に蔑まれたとき、負のスパイラルに陥ってしまう。温厚なお父さんの激情、納得してしまう自分がいる。
ここまでハッキリとした天と地ほどの格差ではなくても、私たちの日常に格差はある。職場、学校、地域……。

映画館を出て暫くは、地上の世界をどこか不思議なものを見るような目つきになってしまった。
「半地下」って絶妙だと思う。地下だと何となく分かるけど、半地下って何?ってなるもんね。視野が広がる感覚。

物語の本質について集中して考えられるのは、映画の演出の良さのおかげでしょうか。
あの、階段を駆け降りて行く場面をもう一度追いかけたい。
わこ

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