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パラサイト 半地下の家族のTaiRaのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
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最初に「コント、トリクルダウン!」って叫んでも成立する。または「こんな新自由主義はイヤだ」。

ハリウッドを通過したポン・ジュノって感じ。寓話的でありながらジャーナリスティックで、尚且つサスペンスフルなコメディに徹底してる。山の手に住む富裕層と下町の半地下住居に住む貧困層の対比、という面は実はそれ程やってないと思う。金持ち一家に侵食する段取りが簡潔で、早い段階で4人全員が入り込むし、主な舞台は金持ち一家の豪邸だし。それは第三勢力の登場と立場の入れ替えをもう一回入れ込みたいから。台詞でも多用されるが「象徴的」な話であり、階層を具現化したロケーション、セットが真の主役。階段が主役と言っても過言ではないか。長男が初めて豪邸を訪れた時は階段を上がって行く彼の後ろ姿を追い、母親が初めて「あの部屋」へ入る時は階段を降りて行く彼女の後ろ姿を追う。豪邸から逃げ出す貧困一家が山の手から坂道を下り、階段を降りて家まで向かう姿も正に「象徴的」。トリクルダウン仮説に対し、滴り落ちるのは富ではなく糞尿にまみれた大量の汚水だけだ、という回答も正しい。金持ちの糞尿に沈んだ半地下の家を名残惜しそうに見るソン・ガンホの悲哀。「象徴的」と言えば、金持ち一家が無邪気に「インディアン」遊びをしている中、英語教師やアメリカ帰りを強調して身分を詐称する貧困一家が侵略して来るのも分かりやすい。その「インディアン」のコスプレをソン・ガンホがした時にまた意味が書き変わるのも。クライマックスの破局に関しては、見せ方が少し物足りないか。それはそうと、ああいう「リスペクトおじさん」みたいなどん底生活者なのに金持ちや権力者を崇拝する人間は本当にいるから困る。生粋の寄生虫根性。あと、日本人でキャスティングするなら金持ち夫妻は確実に東山紀之&木村佳乃だよな。
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