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パラサイト 半地下の家族のSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

132分、本当に目が離せない。カンヌ映画祭やアカデミー賞を獲った事から、もう少し社会派な作品なのかと思っていたが、想像以上に圧倒的なエンターテインメント。もちろん、社会派な要素が全くないわけではないけれど、無理にこじつけるのはナンセンスだと思う。サスペンスともコメディともヒューマンドラマとも言えるし、ジャンルを超えた作品作りは、ポン・ジュノ監督ならでは。
冒頭のWi-Fi接続を探すシーンからも、時代の空気を感じとる監督のセンスが感じられる。たしかに、もはやWi-Fiはライフラインと言ってもいいし、それがないとあらゆる事がままならなくなる。そして、パク家にキム家が“パラサイト”していく展開はスピーディーかつスリリング。豪邸や半地下の家などのロケーションや美術も本当に凄い。ギウは信用されたのに好かれてダヘと付き合っちゃうし、ギジョンは文書偽装、絵画指導、絵画療法、詐欺とマルチな才能を発揮。ギテクもチュンスクも服装が変わるだけで全くの別人になる。でも、匂いは誤魔化し切れないというところが面白い。
そして、後半に差し掛かり、パク家の元家政婦の夫がパク家の地下に住んでいることが発覚する。ここの「北朝鮮からの攻撃に備えて」という設定は、韓国ならではだろう。パラサイト計画が元家政婦夫婦にバレ、証拠も握られた中、元家政婦が朗々と北朝鮮のニュースのモノマネをするシーンは笑ってしまった。普通にモノマネとして上手い。さらにそこから形成が再逆転したかと思いきや、パク家が戻ってきてしまって、てんやわんやの事態に。チュンスクが元家政婦を蹴り落とすシーンも、あまりに強烈で笑ってしまった。ここで話題のジャージャー麺が登場。あの大きなお肉が美味しそう。そういや、前年のカンヌを獲った「万引き家族」でもコロッケ乗せたカップうどんが出てきたな。ほどよくジャンキーな食べ物って、なんであんなに惹かれるのか。また、ダソンの見た幽霊も本物という。ただ、キム家の地獄は終わらず、隠れる机の横のソファでパク夫妻がまぐわい始めてしまう。他人の情事を意図せず見てしまう展開は、「母なる証明」でもあった。ここからの脱出でも、ギデクの脱出途中でキム家の息子による「非常事態」の無線が入る周到っぷり。その後の大雨による洪水含め、息つく間もないジェットコースター。元家政婦はトイレに戻し、ギジョンは吹き出るトイレに座り込み、タバコを蒸すというこのクロスカッティングも印象的だった。
終盤では元家政婦の夫による復讐が始まる。もはやスプラッター映画ばりに。ギデクによるパク殺害も、彼が臭いに関する嫌悪感を抱いている事の伏線が生かされている。ただ、鼻をつぐむこのシーンで、貧困者に対する差別感情を暴きたいわけではないと思う。というか、普通に臭いのは嫌だろうし。この辺の塩梅がやっぱり上手い。是枝監督の「そして父になる」や「万引き家族」でも、貧乏人側のダメなところや金持ち(権力者や強者)側の理解できる部分というのもきちんと描写していて、貧乏人とお金持ちを善悪の二元論で審判を下さない作り方がスマートだと思う。また、全員助かりました、ではなく、ギジョンが亡くなっているという展開がほどよくビターで良い。ギジョンには是非とも、あの世でソウル大学の文書偽装学科に通っていただきたい。ギテクは結果的に半地下から地下へと落ちてしまったが、ギウの計画は上手くいくのか。モールス信号の伏線も巧みだったと思う。
×2
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