渡邉龍馬

パラサイト 半地下の家族の渡邉龍馬のネタバレレビュー・内容・結末

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

半地下で暮らす貧困層の家族が裕福な家庭をゆっくり乗っ取っていく作品、パラサイト
まさか本当に一つの家族を乗っ取っていくような寄生虫になる作品だとは思いもしなかった。

韓国の半地下に住む人々の社会問題を痛烈に描いていて、日本ではありえない事が実際に起こっている実感を持たされた。

この作品で自分が注目したい事が2つある。

一つ目は冒頭部分にチュンスクがギテクに対してゴキブリを揶揄する話をしていたが、終盤にかけてキム家族がゴキブリの様に見せていたと感じた。
ギテクが便所虫をデコピンで飛ばすシーンがあったが、最初からギテクと便所虫は同じ所に住む生き物なんだと説明されていた。

ベッドの下や食べカスが落ちている机の下に地下室まで、どれもゴキブリが住んでいるような場所に隠れる、どう考えても意図して演出していた。
終盤ムングァンの夫がキム家族を殺しまわるシーンはゴキブリを潰していくかの様に残酷に描かれていた。
ギヴの頭を2度殴ったのはゴキブリを殺し切れていなかった時にもう一度スリッパの裏で叩き潰している自分を思い出した。

悲しいほどにお金が無いだけでまるで生活が違う、同じ人間なのに生きている目線が違う事に気付かされる。そんな作品だった。

生きていく術を持っているのはキム家族で、野心に溢れ常に成り上がる作戦を考えているが対照的に常にポジティブに問題が起きたとしてもお金で解決するが考えは浅いパク家族。
キム家族が常にお金に貪欲になっている姿は何処か今の自分にも分かる部分がある。
ギヴがパーティを上から眺め自分が似合うか聞く姿は虚しく寂しい目をしていたし、似合うかどうかなんて考えるのは生きてきた環境の違いを感じさせられた。

二つ目は豪雨に見舞われるシーンで二つの家族の高低差がわかりやすく描かれていた。
半地下に住むキム家族と山の上にあるパク家族、雨に濡れながらも坂を降って階段を降りていく姿は二つの家族の裕福の差を感じさせる。
パク家族の家には木々が生え日差しが刺さり、キム家族には街頭が並び車のヘッドライトが眩しく光っていた。
最低限の暮らしに最高な暮らし。その両方の差を高さで描いている。

見れば見るほ面白みが増す作品だが、辛い現実を受け止めさせられ考えさせられる。
ラストシーンに込めた想いは今を生きる若者が父親の様に地下に住む貧困層の人間を救い出せるような世界を作っていって欲しいと願っている、そんな気がした。

この映画が反響を呼んでいる頃、ソウルで半地下の家が規制される事になったニュースを見た。
この映画を見た人々はパラサイトという作品がフィクションという言葉で片付けるべきではない現実問題に重ねられている事を感じたと思う。
映像は人の心をも動かす力がある事を改めて感じたし自分もそんな作品が作れる人間になりたいと思う。

あー僕も金持ちの寄生虫になりたい。
そうも思った。
渡邉龍馬

渡邉龍馬