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新感染半島 ファイナル・ステージのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.4
 あれから4年後の韓国は、信じられないようなディストピアな世界になっている。ロックダウンされた半島は幾つもの高層ビルはそのまま残っているが、人っ子一人もいない荒涼とした土地にはうすら寒さすら漂う。ゾンビ映画にはこれまでも廃墟になったショッピング・モールなどが出て来たが、今回の新作では半島そのものが巨大な廃墟と化している。その地に主人公たち賞金稼ぎのチームが4WDで現れる。最初は楽な仕事に思われたがマシンガンを発砲した瞬間、乾いた音が辺り一面にこだまするのが印象的だ。その瞬間、映画は地雷スイッチを押してしまったかのように突然動き出す。前作にも観られたが、あらためてもはやここにはゆっくりと歩く古典的なゾンビの姿はない。スイッチを押してしまったところからゾンビたちは音と光に反応し、もの凄いスピードで直線的に主人公たちに襲い掛かるのだ。対する主人公側もゾンビのあり得ないようなスピードに対抗するかのごとく、車の回転は加速度的にうねりを上げ、数多のゾンビたちを巻き込み、轢き殺しながら暴力的に進んで行く。その姿は車というより鉄の塊である。カー・アクションはVFX丸出しだが、凄いとしか言いようがない。あの急ブレーキ急ハンドルなら、間違いなくタイヤが持たないだろう。

 人間として生き延びることは困難を極める。いっそのことゾンビになって、人間を食らいながらその他大勢の一人として暮らした方が幸せなのかもしれない。荒涼とした世界に生き残り、サバイブし続ける人々のウジ虫のような生命力は、人を人と思わない。ある意味ゾンビよりも人間の方が絶望的に醜く、たちが悪い。ゾンビと隣り合わせの世界の中でも、生き抜かなければ意味がない。底辺に暮らす人間たちは、自分よりも下の地位に奴隷のように人間を置くことでしか平静を保てない。毒牙に噛まれたキム・ドユンも気の毒だが、人間性を失った野蛮なキム・ミンジェの姿が心底胸糞悪い。かつては国民を守る部隊だったはずの631部隊の荒れっぷりは凄まじく、隊長は生きる気力を失っている。映画は大金を積んだトラックを三つ巴で奪い合う物語の運びのせいで、途中ゾンビが脇に置かれ、いったい何の映画なのかわからなくなる。逃げる主人公を追ってくるのはまずはぐれ者の人間たちであり、ゾンビではない。その意味で今作は残念ながら前作ほどのカタルシスはないし、ゾンビ映画としての焦点もややぼんやりしてしまった。VFXで暗部を書き足せば書き足すほど、映画はサバゲーに近付いていく。
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