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罪の声のなのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 当事者じゃなくても辛い事実に向き合い、何が引き起こされたのか明らかにすることはとても怖くて辛いことだと思う。警察や記者は本当にすごい…鑑賞前に偶然横山秀夫の小説を読み直していたおかげかかなり入り込めた。新聞記者であった同作者の『64』や『ペルソナの微笑』を彷彿とさせる話でもあった。
 題材となったグリコ森永事件も直接の被害者(特に死亡者)は出ていないけど、解雇された従業員や声を使われた子供達のような明るみに出ていない被害者は相当数いるのかなと思うと心が重くなった。Wikipediaを見ると当時の滋賀県警本部長がハウス食品の身代金受け渡しを取り逃がした責任から焼身自殺したとあり、ヒェ…と思った。あとノンキャリで県警本部長なのすごいなと思った。
 「今なら何にでもなれる」と娘の頭を撫でる母のシーンと、夢に向かって進むことも、友人と顔を合わせて話す時間も、外を気軽に歩く機会も奪われた少女が対比されているようで胸が苦しくなった。最後に彼女の人生を壊したテープの音声が母と弟を慰めているのは皮肉だと思った。
 学生運動をする人たちの気持ちがよくわからなかった(なんとなくカルトぽくて知ることを避けていたのもある)けれど、辰雄も母親も「社会を変えたい」というより個人的な怨恨から生じた「社会への反抗」という感じがして、ハーンこういう流れね〜となった。もちろん一概には言えないだろうけど。どうしても私には彼らがボニーとクライドになりきれなかったように思えた。
 真実を明らかにすることはその行動自体に意味があるのかもしれないなと思った。結果的にはそうちゃんを救い、のぞみちゃんの弔うことになったこのエンドだったからそう考えるだけかもしれないけど。阿久津は当事者達の苦しみを"エンタメ"として提供することに不満を唱えていたが、そうすることで私のような無知な人間の元にも考える種を蒔くことができるんだぜ、と伝えたい。
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