さば

罪の声のさばのネタバレレビュー・内容・結末

罪の声(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

脚本・野木亜紀子の時点で見るべきだったんだけどやっと見た。野木先生が手がけた「アンナチュラル」に関しておっしゃっていた、絶望で終わらずに未来につながる物語を描かなければいけない、という意志がこの作品でも感じられた気がした。特に最後、生島親子の再会の時に亡くなってしまった娘の声を聞きたいという母に、事件に使われたテープの音声を聴かせるというのがたまらなかった。親子の人生が一変してしまった原因であるその音声が、母と弟にとってこの瞬間、救いというか希望となったんだなと。学生運動のことや過激派のことは全然親しみがなくて、それが当時どういう認識の活動だったのか、私には感覚が掴めないけど、社会に対する不満をちゃんと伝えるのは大事、でも正義という名のもとに人が暴走してしまうことはいまだに絶えないわけで、、同じく野木先生の「正義を盾にルールを破ることは危うい。なぜなら人によって見える正義は違うわけで、全員が好き勝手にルールを破り始めたら社会が崩壊する。」がとても分かりやすく表れていた時代だったのかもと思った。正義を貫くために3人の子供を主に犠牲になった。でも実行した犯人たちはこんな結末になるなんて思わなかったんだろうな、単に想像力の問題か、正義を貫くという闘争心に他のことが見えていなかったのかもしれないしな。それに、マスコミが未解決事件の真相を明らかにすることの意義というのも考えさせられた。それを話す阿久津と上司のシーンも印象的だった。それこそ今の報道はマスゴミと言ってしまいたいほど個人的に嫌悪感を抱いている部分がある。世間に訴えるために報道の世界で働くのも、探偵ごっこがしたいただの自己満足なのも、まあ人間だから仕方ないよなあとも思うし、だからって虚偽の情報を流すのは絶対違うけど。
あと、犠牲になった姉ののぞみちゃんが、ここから逃げて、英語の勉強して、夢を絶対に叶えるって話していたのがとても胸に刺さった。私はいま何不自由なく大学に通えていて、好きなことをしたり勉強したりずっと豊かに暮らしているのにそれを自分から無駄にするような怠慢をしている自覚があったのでハッとした。この作品を通して、野木先生の思いとか、時代、社会、正義の脆さ、それに自分の今の生活についても見直したいと思うことができた。
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