さば

家族を想うときのさばのネタバレレビュー・内容・結末

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

授業で取り上げられた映画で、社会問題を扱ったものを見たかったのでこの作品を選んだ。この映画でイギリスの労働者階級の生活とは現実的にはどのようなものなのか知ることができたと思う。主人公であるリッキーが始める仕事が配達ドライバーで、日本の物流の「2024年問題」と関連させながら映画を鑑賞した。1日10時間以上も運転し、駐車禁止の切符を切られてしまったり、様々な顧客に対応しなければならなかったり、物流という現代になくてはならない仕事でこのような労働環境が改善されていない現状に危機感を持つべきだと感じた。リッキーの上司であるマロニーの、運転手たちへの対応は酷いもので、彼らを人とも思っていないような言動が多く見られた。しかし彼も自分の生活を守るのに必死なはずで、そう考えると責めることはできない。みな精神的にも余裕がなく、職場で暴言が飛び交っていて見ているのが辛かった。リッキーの子どもであるセブとライザは、働きづめの両親が毎晩疲れて帰ってくることやすぐに感情的になってしまうことをとても心配していただろうし、特にセブが非行に走ってしまうのは、今の家族の姿を見るのが辛いことによる逃避行動だと感じた。子供たちが「昔みたいな家族に戻りたい」と願っているのが彼らの言動から伝わってきて胸が締め付けられた。この作品のレビューを見てみると、家族愛に泣けるとか、家族のために頑張る姿が感動的という声があったが、個人的には全くそうは思えなかった。社会に翻弄され、経済的にも精神的にも余裕のある暮らしのできない労働者階級の現実がこの作品では描かれていた。彼らがこのような生活を強いられている原因は社会にあるのに、それが個人の責任として帰着してしまう現実のやるせなさを痛感する物語だった。そしてこれは他人事ではなく、今年まさに物流の問題に直面するであろう私たちにとっても重要な課題である。理想の家族の姿とは何か、私にとって労働とは何かを考えさせられる作品だった。
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