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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のsheのレビュー・感想・評価

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最高の雑誌が遂に来たよー!

改めて映画館で好きな監督の最新作が観られる瞬間って、本当に本当に幸せなことだとしみじみ。1秒1秒が楽しくってしょうがなかったな!

いつものことながら、今回もまた映像と言葉の情報量がもう大洪水で駆け流れてゆく。
街、アート、政治、食。
雑誌記事だから、活字、台詞、ワード、テンポよい音たち、流れてゆく言葉たち、画面に浮かんでいるタイポグラフィたち、それぞれがとてつもなく愛しかった。
しかも素晴らしい俳優たちが素晴らしい温度で音にのせてくれるんだから常に前のめりで画面に全神経をつっこんで観た。はぁ、最高。

私は監督の作品を観る時、この情報が脳と心にぶちあたって洪水にのまれていく体感が本当に大好き。
愛と誇りとユーモアを詰め込まれた作品に、いつも衝動的に見終わった後なぜか泣いてしまう。
今回もすべての俳優たちの演技(お馴染みの顔触れが多すぎてファンにはたまらん)それを彩る画面の色使い(モノクロとカラーの使い方に恍惚)エンドロールのシンプル美しい時間。
作品を届けてくれてありがとう。。

ウェス・アンダーソンの映画は本当にお洒落映画ではあるけれど、とにかく人間(というより生き物)や今までの歴史への愛がその膨大な時間を掛けて神経とセンスを注ぎ込んで示されていることにたまらなく尊敬する。

細かいところや好きなシーンは挙げ始めたらきりがないので割愛。
ただ、レア・セドゥの指スナップがあまりにも魅力的すぎて痺れた。フランス語と英語の織り交ぜも要所要所でときめきに刺さる。

今時は、紙媒体の雑誌も多くが休刊になったり電子化になってSNSなどがその代わりとしての文化にもなりつつあるのかもしれないけれど、
ライターたちがそれぞれのフィールドから琴線に触れた物語(きっと個人的な想いも背後に上手く隠して取捨選択されたであろう)を取り上げて、孤独な作業を経てタイプされ整えられた情報たちは、たとえ習慣が変わっていったとしても忘れてはいけない情熱を(物語とは個人的なことだということを添えて)いつまでも伝えてくれる普遍なメディアだと思う。
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