映画の表現がぶっ飛んでいる。よくわからないところもあったが、これはおもしろかったということにしておきましょう。
3つの物語は、それぞれのレポーターが語るように展開される。普通は事実があって記事があるのだけど、この映画は記事からの映像を創り出したように感じた。これまでの約束事は、いったん解体して新しく構築されたような。
ポップな現代アートのような映像は、細部まで徹底していて、普通なら不自然に感じる構図も美しく感じる。
何度かストップモーションもあった。映像を止めているのではない。役者たちが止まっている。
モノクロとカラーの使い分けも凝っていた。カラーもパステルカラーで、どこかポップな絵画的だ。
仕掛けの多い飛びだす絵本のページをめくっているような感覚。
最後はまさかのアニメーション。恐れ入りました。
ここまでやられたら、ストーリーがどうだとか、役者の演技がとか、感情移入がとか、ましてネタバレとかどうでもいい。
ただただ映像体験に浸ればそれでいい。
いまは情報はネットの中にあるが、90年代はまだ雑誌が中心で、それが文化だった。ネットは知りたいところだけ調べて終わり。効率はいいがなんだか味気なさがある。架空の間に街の架空の雑誌「フレンチディスパッチ」。日本版が創刊されないものかと思いながら、パンフを購入した。