matchypotter

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のmatchypotterのレビュー・感想・評価

3.9
これも何だか独特なオーラを放ってて前から観よう観ようと思ってここまで来てしまったやつ。

ウェスアンダーソン監督。『グランドブダペストホテル』『犬ヶ島』の監督。この監督の独特の造形。
クレイアニメっぽいというのか、とにかく色んな造りが可愛い。
まさに誰かの頭の中にある真実と空想が混ぜこぜになってるモノを現実に引っ張り出すとこんな感じなる、みたいな話と相性が良過ぎる。

彼の作品、この絵のイメージの強さにまず強烈なインパクトがあるが、結局人やドラマにフォーカスされていく構成というか流れがすごいと思う。
ただの“クセのある奇抜な映画”にならない力、さすがです。

今回もそんな群像劇。
“フレンチディスパッチ”の編集部を中心に、クセが強い記者たちがクセの強いネタを取材し、クセの強い記事を書き、クセの強い編集長がそれを校正する。

オーウェンウィルソン、フランシスマクドーマンド、記者たちのクセ。ビルーマーレイ、編集長のクセ。

そして、いくつかある記事のネタが群像劇になっていてそれぞれがさすが記事のネタになるだけあってみんながそれぞれ濃厚な物語。

それを豪華キャストがウェスアンダーソンの唯一無二の世界観の上で豪快に印象的に描き切る。

特にエイドリアンブロディー、ティモシーシャラメ、ウィレムデフォー、存在感が尋常ではない。
もともとこの監督の世界観に圧倒されるところを、その雰囲気だけで飲み込ませないぞと言わんばかりにこの空気に負けずに存在感を残す。スゴい。

にしても、シャラメ、カッコよすぎだろ。

ただ独特なユーモアと温かみのあるタッチで描くだけでなく、話の層も厚く、雑誌の編集部の記事の群像劇だけある。

雑誌を読み進めるかのように色んな話がテンポ良く区切られながら進む。

そこには、スクープのような“事実は小説より奇なり”みたいな話もあれば、社会的テーマを追ううちに中立の立場で記事を書く記者がその社会的な学生運動に飲まれたり。

ネタをしっかり“ネタ”としてすっぱ抜く感じと、“ネタ”になるだけのスクープ感と特ダネ感、記者たちのそれぞれの人間性やネタに対するアプローチも違ってて、色んな角度で楽しめた。

まるで、雑誌をパラパラめくりながら気になる記事には目を留めて気付くとガッツリ熟読しちゃってるあの感じ、あれがこの映画を観始めると起きる。

その“ネタ”を解決するではなく、暴いて正しく報じる、雑誌の本来の活動目的をベースにしていて非現実的な話でも日常のどこかに起きてることだと思えるリアルさもある。

さすが、サーチライトとウェスアンダーソン監督としか言いようがない唯一無二の映画。


F:1949
M:34691
matchypotter

matchypotter