来世はおしるこ

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の来世はおしるこのレビュー・感想・評価

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『グランド・ブダペスト・ホテル』を観て「小説かよ長すぎ」と一瞬でウェス・アンダーソンを嫌いになったわたしからすると、本をテーマにした今作は「まあ分かる」と言った具合だったが、やっぱり嫌いなものは嫌いなもんで観てる間「何が嫌なんだろう?」とばかり考えていた

わたしはジャームッシュ作品(大好き)を観て「字幕マジで要らない」と毎度言うんだけど、ウェス・アンダーソン作品は悪い意味で字幕マジで要らないと思う
台詞のほとんどを占めるナレーションというか語りの部分がやり過ぎなくらい詩的すぎる、ポエティックすぎる、ビッグワーズが多すぎて「言いたいだけだろ」感がすごい、やりたいだけにしか感じない言葉遊びが拾いづらすぎてマジで字幕にしたところで何の意味もなしてないと思う、そこに仏語も混じっていて(そしてそれをわたしはジェニュインな仏語なのかアメリカ人の仏語なのかアメリカ人がオーセンティックな仏語をなぞろうとしている仏語なのかなど全く分からないので尚更)、作ってる側が英語話者でない人にこの作品を分からせようとしている気が全くしない、ウェス・アンダーソンにとってわたしたちは「他者」過ぎる、マジでムカつく
しかも何がムカつくってそれを怖いくらい徹底した画面作りでパッケージングして、言葉が分からない人にも「なんか分かんないけどおしゃれだから好き」のルートを残してるのがマジでキツい、日本以外の非西洋文化圏の事情はよく分からないけど日本においては間違いなくこの根強い西洋コンプレックスにめちゃくちゃ刺さる作り方をしてると思う、だから『ダージリン急行』みたいにオリエントを舞台にしてる作品なんかは怖すぎて観れたもんじゃない
最近の話題作で言うとドラマ『ホットスポット』の衣装や画面の色味がウェスっぽいなんてちょっとバズってたけど、上っ面の分かりやすいインスタジェニックさだけで市民権を得てる感じがマジでバカにされてる感しかなくてムカつく

あと個人的には囚人がこの期に及んで筆を裸婦(しかも警官)に突き立ててたのがマジで本当に気持ち悪すぎて死んでくださいって感じだった、レアセドゥは筆を叩き落としてたけど無力ながらも虚勢を張っている様子を愛でるようなカメラの視線で、あ〜都合の良いキモい夢想と思う、70年代パリを舞台にしてるからって何の理由にもなってないからね、100年単位で時代間違えてんじゃないのって思う

「このおばさんは僕と恋になんか落ちてないよ」「このおばさんをカウントしなかったら僕もバージン」なんて台詞が立て込む第二章も、なんの文脈もなくただパリってだけでフジタの見かけをしたシェフを出して浅はかにも移民の苦悩を語る第三章も、嫌なところを挙げたらキリがないと思う

カンバーバッチが出てる作品だけ観たいなと思うけど、もう本当に観たくないな、後味が悪すぎる
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