ワンコ

パラダイス・ネクストのワンコのレビュー・感想・評価

パラダイス・ネクスト(2019年製作の映画)
4.3
顔のない人物画
割と絵を観に美術館に足を運ぶ方だが、顔のない肖像画で思い出すのはルネ・マグリッドくらいだ。
調べると、心理学的考察として、顔のない人物画を描く子供は、孤独であることが多いようだ。
シャオエンの描いた顔のない肖像画の顔をイメージしようとしても、決して楽しそうな、幸せそうな表情にはならない。
この絵に強く惹かれた牧野も、この絵を破り捨てるシャオエンも、そして、貼り付けて表情を描き足した島も、それぞれ異なるものかもしれないが、孤独に追われ、孤独を抱え、孤独を住処のようにしていた。

楽園とは一体なんだろうか。
昔読んだ、楽園という小説は、楽園に辿り着くまでがストーリーで、楽園がどんな所だったのか描いてなかったように思う。
実は、楽園とは、そのような所かもしれない。
あるのか、無いのかは分からない。
だが、求めなければ決して辿り着けない。
そして、辿り着いたとしても、そこが楽園かどうかは確かめようもない場所。

この3人にとっての楽園は、孤独のない場所だったのだろうか。
あと一息なのに、近づくと、遠のいてしまう、そんな場所。
笑うことのなかった島が少し笑ったように見えた。
楽園はきっとあると伝えたかったのか、それとも楽園はないんだと自分に言い聞かせたかったのか。
様々な想いが交錯するストーリーだった。

音楽が素晴らしかった。
バイクと自転車の場面は、高揚感のようなひと時の幸福が音楽とともにランデブーするようだった。

最後に、顔のない人物画を描く子供が、必ずしも孤独に苛まれているわけではないとのこと。もっと多面的に分析が必要とされるとのこと。ご理解下さい。
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