eye

幸福の目のeyeのレビュー・感想・評価

幸福の目(2018年製作の映画)
3.7
"幸福の目" (2018)


人里離れた田舎町で暮らす兄弟のもとへ
日々たくさんの来客が訪れている

兄は "全盲者"

だが 訪れる人の悩みを聞き

相談者の未来を "見ている"

--------------------------------
"明るい未来が見えてますからね"

"あなたには明るい未来が待っています"
--------------------------------

そこには


宗教的な雰囲気もまとい
その人の未来を悟って説法のようでもある

兄は "見えない" のに "見えている"
というパラドックスが表現されている

第3者の生活には苦しみが多く語られる

相談者は藁をもすがる思いで
たどり着いた先に理解や共感を得たく
必死な姿も見受けられる

不条理な世界を生きる中で
絶対的な人物にすがっただけで
自分の悩みが解決すると思えてしまう

残酷だが 結果として
誰の願いも叶う様子はない

ただ"人はどこまで信じられるか"

が重要であるということも理解できる

監督が述べていた

「サイコロの目を自分で振ったはずなのに
違う目が出る」

出来事に対する別の視点を持ち
どう物事を捉えるかについて

少し共感することからその人の生活が変わる
ことが重要であるということでもある

曖昧な未来は不確かな現実も合わせている

ある1人の少女は全盲の兄の元を
母親と一緒に訪れる

未来が見える強力な権力者(兄)
を目の当たりにして惹かれ セックスをする

少女の元彼氏が乗り込んできたことで
その彼の未来を予知してみせる

"あなたはスーツを着て働いている
結婚はしていない・幸せにはなれない"

いつものように未来予知を行うが

これまで幸せを予知し続けたはずが
突如 不幸せを予知し始める

少女はその予知に疑念を募らせる

少女の ある計画的な行動により
兄を大変な未来へ導く

元来 未来が見える人のパラドックスとして
何故か自分の未来は見えないことが多い

劇中 兄弟間のパワーバランスは奇妙な形で
作られ歪を保ち続けている

最終的に兄と弟は別離することになる

兄の角膜をプレパラートに閉じ込め
鏡を通じて弟自身は何が見えたのか

明るい未来だったのか

この映画は

ハッピーエンドなのか
はたまたバッドエンドなのか

上映後に語られていた

個人的にはどちらでもなくその中間といえる

どの人物の視点で捉えるかにより
結末は変わってくる

兄自身を捉えてしまえばバッドエンド
少女-彼氏で捉えればハッピーエンド

兄の予知する未来を再現するべく

少女の元彼氏を襲ったのが弟であること

ということが語られるが
一方で彼は兄に縛られ続けていた

鬱屈した雰囲気の中で兄がいなくなり
解放され次のフェーズに入るシーンがある

彼は人里離れた場所から社会との交流を求め
明るい未来を見つめることなる

桜が咲いている道を歩く
アルバイトを始める
電車に乗る

など生活を一変させていく

人は生き続ける限り
自身や他人を肯定していく必要がある

"未来を望みつつ 自分で変えていく"

曖昧だが不確かな現実を歩んでいくという
本来の意味を問いかけてくれる映画
eye

eye