どらどら

はちどりのどらどらのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.8
- 理不尽なことが多いわよね

14歳の世界の解像度で観たとき
世界は耐え難いほどに理不尽だ
暴力、病、差別、裏切り、事故、死
どこまでも分かり合えない他人が、どこまでも無自覚に自分を傷つけ、そして自分もまた、その1人であるということ

歳を重ねると、人は解像度を鈍らせる
「無関心」というレンズを手にすることで
この理不尽な世界では、仕方がないことかもしれないけれど

この映画は、その理不尽さから逃げない
14歳の世界の解像度のまま、この理不尽に立ち向かう
そのとき、世界の美しさが、立ち上がってくる

“世界は不思議で美しい”
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キムボラ監督長編デビュー作
見る前と見たあとで、世界の見え方が変わる。そんな映画。
たしかに自分にもあって、でも気が付かないうちに捨てていた世界の見方が、この映画にはある。そして、その絶望的な辛さとそれ以上の美しさも。
多分、こういう映画をずっと観たかったのかもしれない。

ウニ役のパク•ジフの風とともに揺れ動くような表情の全てが印象的。一切の説明的描写を省き、ウニ自身が咀嚼しきれていない感情が生のままにそこにある。文字にできないその真実を捉えるために、映画があるのだから。

この、「瑞々しさ」とか「ジュベナイル感」とかともまた違った、若いときの違和感と世界の見え方。自分がいるべきなのはここではないのではないかという感覚。家族を含め、他人と関わることの恐ろしさ。存外間近に死というものはあるのだという、気づき。
気がついたら失っていたそれらが、鮮やかに浮かび上がってきた。

ひたすらに抑制の効いた演出、社会に激震をもたらした事件と1人の少女の生活の距離感、家庭の中に、学校の中に、内在している見えない暴力。なびく風。
この繊細さに自分のかつての繊細さを見つけ、そしていつの間にかそれを失っていたことに気づく観客が多かったからこそ、これほどに絶大な支持を集めたのだと思う。
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