sakura

はちどりのsakuraのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
3.7
子どもの視点で描かれた作品が苦手だ。
作品の主人公になるような子どもの親は大抵の場合「ちゃんと」していないことが多く、「ちゃんと」していない親を見せられる映画は、“あなたは「ちゃんと」した親か”と問われている気がしてしまうし、当方その自信を持ち合わせてはいないから。

けれど、本作『はちどり』にそういう息苦しさを感じなかったのは、主人公のウニとウニの母、ふたりだけでなく、父親も姉も兄も、ウニと母の間の世代にあたるヨンジも、全員が誰も幸せそうには見えなかったからかもしれない。

「家父長制」「男らしさ」「女らしさ」、誰も幸せにしない、まじで。


舞台は94年で、わたしは95年の生まれなので、この中の誰とも同世代ではないけれど、この作品が長編初監督作品である監督キム・ボラ、彼女がこの作品を作ったのは現代なわけであって、
たとえ国が違っても、言語が違っても、文化が違っても、
今この時代に同じ世界に生きていて、同じ苦しみや葛藤を抱えていて、同じ希望や願いを抱いている。その尊さを思う。

タイトルが『はちどり』(原題:House of hummingbird)というのも、いい。
どんな虫よりも一秒間に羽ばたく回数が多いと言われる、はちどり。
だからと言って凄まじく速く飛ぶというわけではなく、その場に留まるために凄まじい回数羽ばたく。逆にいうと、凄まじい回数の羽ばたきをもってしても、その場に滞空し続けることしかできない。
わたしたちを見ているよう。悲観ではなく。
わたしは、「わたしの居場所」を築き、守るためなら、何万回でも羽ばたく。
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