もの語りたがり屋

はちどりのもの語りたがり屋のレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.2
生きていくことは苦しい。でも、だからこそ尊い

この映画がなぜ評価されるのか。一見単調で助長のように感じる。さまざまな事件は起こるもののドラマチックな展開は少ない。

でもそれが人生そのものだし、圧倒的なリアルがあるからだ。

生は偶然、死は必然。ただただ生老病死。この世になぜ生を授かり、なんのために死に向かって生きていくのか。産めよ増やせよの右肩上がりの時代ではごまかされてきたが、このモノやサービスに満たされた、表面的には豊かな時代に生きがいを見失っている人が蔓延している。

家族、友人、恋人、上司と部下…常になにかしらの人間関係の悩みを抱えている。永遠に安息できる場所なんて存在せず、くっついたり離れたりを繰り返すのが人生である。

決してうまくいかないときがあっても、自分そして相手に向き合うことが大切である。最後に救ってくれるのは、他のなにものでもなく寄り添う人の心なのだ。

「つらいことがあっても指は動いている」悩んでいるより、とにかく行動に起こしてみることが大事。

この世界は不思議だけど美しい。

『はちどり』というタイトルには、「世界で最も小さい鳥のひとつでありながら、その羽を1秒に80回も羽ばたかせ、蜜を求めて長く飛び続けるはちどりは、希望、愛、生命力の象徴とされる」その姿が主人公のウニと似ているという監督の想いが込められている。

そしてなにより主演パク・ジフの圧倒的な力。他を寄せ付けないかわいさがあり、表情豊かで目の演技が素晴らしい。

ひとつ引っかかったのが、下の階のお母さんはどういう意味だったのか。僕には分からなかった。