Kayot

はちどりのKayotのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.0
韓国のどこにでもいそうな14歳の少女の視点から見る物語。

主演のパク・ジフの演技力と透明感がとにかく圧倒的。映画が進むにつれ、物語の中に引き込んでいく吸引力が凄かった。

ノスタルジックな映像が美しい。過度な音楽も演出もなく、綺麗な街並みや風景や華やかな生活があるわけでもなく、韓国のどこにでもありそうな“日常”をそっと覗き見ている気持ちになる。

その日常で普段から側にいる家族、親友、恋人、学校の後輩。わかっていると思っていても、その人達の言動の裏にどんな気持ちや考えがあるかはわからない。ヨンジ先生の話した漢詩「顔を知っている人で心までわかる人は何人いるか?」が物語全体のテーマかなと思う。普段強気だった人が見せる突然の涙に弱さを見て驚いたり、大切な人を失った悲しみも、実際に自分の身に起きないとわからないように。内側はわからない個々同士が様々な形で時に繋がり、出会い、また離れていく。それを繰り返して流れていく“日常”。

映画のラスト、一瞬だけウニとスクリーン越しに目が合ったのは、今までウニと一体となって物語を追っていた視聴者もまた、彼女とは別人で心の中はわからないと言われているような気がした。

一言で語るのはとても難しい映画だけど、監督の描く心の描写がとにかく心地よいと感じた。見るたびに違う発見や感じ方がありそうでまた数年後に見てみたいし、今後も別作品を鑑賞してみたい。
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