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はちどりのmotoのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.5
これまで見てきた韓国の映画とはひと味違った感じがする。同じように社会や家庭を扱った映画がある中で、自分が見てきた多くの韓国映画は心にナイフで切り込みを入れられるような、痛みを必ず伴っていた。対して、この映画は不思議とその痛みに疼くことはない。劇中で様々な事件が起きるが、不思議と心に荒波立つことがなかったのだ。しかし確実に自分の心の中に残っている。その穏やかなタッチと確実性に不思議な感じを覚えた。

音楽を極力入れないことは非常に効果的だと感じた。会話の間や、その間のふとした沈黙、そして間を埋めるかのような鳥のさえずり、それらが非常に心地よく感じさせた。

感情は何度も爆発する。けれどもカメラワークや音の演出などなどがその緩衝材となり穏やかに包み込んでいたのかもしれない。

ウニが本当に小声で、少し照れ臭そうに「ふふ」と少しだけこぼれでたような笑い方が非常に可愛かった。ジヨン先生も気のせいか、似たような笑い方をする。それにこの二人はどちらも左利きである。だけどウニはまだあどけなさが残る指をしているのに対してジヨン先生の指は細く繊細で美しい。この二人の共通点と対比されるべき点も繊細で優しい。

「何もできないと感じたときに、指を動かしてごらん。不思議だよね。指は動くんだ。」

正確に引用できてはないが、この言葉は本当に穏やかに心の無力感を拭い去ってくれるものだった。
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