菩薩

天国にちがいないの菩薩のレビュー・感想・評価

天国にちがいない(2019年製作の映画)
4.0
過去作からのセルフオマージュが多々見受けられながらも、暴動の記憶も新しいパリを舞台の一つに選んだ意義は汲み取らねばならないし、一貫して対立では融和を説く穏やかな語り口はここに来ても健在、もはや「懇願」にも近いその主張に、25年経てどまるで立場の変わらないスレイマン自身の心境を思うとクスりとは出来ても爆笑など出来ない。分断と暴動を煽る暴君は去り、融和と団結を訴える長老に新たな舵取りが任された今、彼の語り口は更なる重要性を帯びてくるに違いない。せめて隣人くらいは愛せよとの切なる願い、ただその愛し方を間違えるとそれも悲劇に繋がる。世界そのものをパレスチナの縮図と見る大きな視座、それを自分勝手だとも思えないかな。にしてもスレイマン、随分とお腹が出ちゃったんじゃないの…。あと再逮捕される前の田代まさしに似てる。ほのかに香るスパイク・リー及びロイ・アンダーソン臭。今のところスレイマンのベスト、と言うか一番素直で分かりやすい。スレイマンは喋らない。
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