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燃ゆる女の肖像のkurageのネタバレレビュー・内容・結末

燃ゆる女の肖像(2019年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

とても集中力のいる映画だった。
船の上から波間に落ちたキャンバスを着衣のまま飛び込んで拾いに行くー。画家マリアンヌは貴族の娘、エロイーズの見合い用の肖像画を描くために、波に揉まれながら船で孤島に渡る。
何が起こるのだろうと期待感あふれるオープニングからそのままに画面を見続けていたら、音楽が流れていなかったのに気づかなかった。
気づいたのは、女たちが集まったところで。
もしかして流れていたかもしれないけれど。いや、流れていなかった気がする(自信はない)。

まるで油絵のような(特に暖炉前で料理をするところはフェルメールの絵画のよう)画力の強さもあったのだけど、主役二人が近づいていくさま、感情が交差する一瞬がいつかと見逃せなさすぎて、とにかく集中した。
そして、余韻は長く続く。目を閉じるとブルターニュ地方の荒波の前に立っているような気分になる。

相手を観察しながら描く画家に対峙してモデルは存在する。お互いに、どのあたりを見ているか、眼差しを伝え合える関係性だとわかった瞬間に二人の距離はぐっと近くなる。オルフェウスの引用と28ページに描いた自分。画面に登場する人が本当に少なく、セリフも少ない。ほぼ女性だけの映画。

回想物語にしたのが良かったのかもしれない。一瞬にして燃え上がった心の炎ーいつまでも残るともしびは切なくて美しい。
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