これフランス人や外国の方々にはユペールが日本人でいうところの樹木希林さん的な人に見えているのだろうか(全くもって個人的なイメージ)。何か現世のあれこれを達観したような、役者という言葉では足りない、それを超越した雰囲気を帯びてきたなと(希林さんとは10程年齢も違うけれど)。逆にわたしたちは希林さんを重ねて観るくらいの方が、本作のフランキー(ユペール)を理解できるのではないかなと思った。物語の軸となっているフランキーの終活は、やや強引に周囲を振り回すものとなっていて、そこがまたフランスらしいと言えばそうだし、だからと言って嫌な感じのしないところは流石ユペールだなと思わされる。ただ『グレタ』でもそう感じたけれど、ユペールはフランス語の方が好きかな。ちゃんと自分の言葉に聞こえるから。『サマーフィーリング』のように、景色を積極的に取り入れつつ(『岩合光昭の世界ネコ歩き』に出てきそうなポルトガルの街並み)、その場所場所でホン・サンスばりに始まる会話、会話、会話。それだけの映画と言ってしまえばロメール感なんだろうか。でも、あながち間違ってはいないので、その辺りが好きな方にはスッと入ってくる作品だと思う。劇的ではない時、それもまた人生。