ユウコリリーナ

レ・ミゼラブルのユウコリリーナのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
あの有名なミュージカルやユゴーの小説、ではない方です笑
2019年のカンヌで「パラサイト」とパルムドールを争い、アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされている社会派ドラマ。

舞台はパリ郊外のモンフェルメイユ。
ヴィクトル・ユゴーの「レ・ミゼラブル」にも登場し、現在は犯罪多発地区の一部となっている場所です。
描かれるのは、多くの日本人がイメージするようなキラキラでブルジョアな花の都とは真逆の、でも現実のパリの姿。

明確な善も悪もなく、溜まっていくフラストレーションの行き場もなく
一見平穏だけど、何となくピリピリした空気の日常。
物語自体はフィクション、でも描かれていることは現実だというラジ・リ監督の言葉が重く
(実際、監督自身がこの町の出身らしい)
世界のどこの国でも同じような問題を抱えていて、やり場のない怒りのはけ口を誰もが探していると感じる作品でした。

それにしてもフランス人はエモーショナルすぎるw
日本人がおとなしいというのもあるだろうけど
暴力に訴えても何も解決しないし、2005年の暴動でも何も残らなかったって言ってるのにね。

勝利も敗北もないまま、孤独なレースは続いてく
という歌の一節を思い出しました。
あの行動の果てに、彼らは何かを得ることが、変わることができるのだろうか?

以下蛇足ですが、上映後のトークショーでは
「パリでは生まれた住所でその後の人生がほぼ決まる、今でも格差社会は根強い」
「履歴書で、たとえばミシェルさんとモハメッドさんがいたら、経歴も何も見ずにミシェルさんが採用になる」
等、フランスに根深く残る差別や郊外の治安の話が色々聞けて楽しかったです。
ちなみに今は履歴書に名前も住所も年齢も書けないそうで
TELでのやり取りのみってむしろ不便なのでは…笑