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レ・ミゼラブルのkiryuのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.7
と、いうわけで。
直前に「ラスト・ディール」を観てからの、
本命「レ・ミゼラブル」

本当は、渋谷bunkamuraで鑑賞計画をしていたのだけれども、ウイルス対策のせいで閉館中となってしまい、劇場変更。

とんでもない映画を観た…と「パラサイト」を観た時も思ったけれども、この作品もとんでもなかった…。

カンヌ映画祭、アカデミー外国語映画賞で「パラサイト」と競り合ったというのも納得。

こんなに怒りと暴力と悲しみ、そしてずっと不穏な空気が漂い、緊張・緊迫しどうしの連鎖の作品、久しぶりに観た。

驚くのは、ここに描かれていることは、監督が実際に体験したり身近で起きた出来事ということ。カメラもドキュメンタリータッチなので、その場で体験しているような感じで、とても辛い光景を突きつけてくる。

パリといえば華やかなイメージがあるけれど、少し離れた郊外では移民がたくさんいる…というのを知らなかったので(でも割とそういう映画もいっぱい観てきているけれど、頭にこびりついたイメージというものはなかなか変わらない)、今回本当に驚いた。

出だしは2018年、フランスがサッカーワールドカップに優勝してフランス国旗が振られている、パリ中が盛り上がっているところからはじまる。
…フランス中が1つになった瞬間。
でも、実際はどうなのか。
パリ郊外のモンフェルメイユ、治安が悪い。
警察の人間(犯罪対策班)も例外ではなく、暴力で人々を抑えようとする。
ただし、乱暴な警察の人間も勤務が終われば親だったり家族がいる。
簡単に善人悪人と一方的にならないのが人間。

それぞれが自身を守り、相手を制御しようとし、しかしあるきっかけでどんどん雪だるま式にとんでもない方向に向かっていく…じゃあどうしたらよかったのか…最後のシーン…「家族を想うとき」のような、絶望しかないけれど希望を祈らずにはいられないカットで終わるのがとてつもなくやるせない。

ラスト、ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」の引用の文章が刺さる。
(ここにも書こうと思ったけれど、映画館で見てほしい)

あと、この悲惨な状態が良くなるようにと祈りを込めて満点にはしない。

いくつかある予告でお勧めされている「シティ・オブ・ゴッド」の他にも「ビフォア・レイン」、「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)」「預言者」なども思い出した。

あと、パンフに書いてあるマチュー・カソヴィッツ監督作品の「憎しみ」他紹介されている作品は多分観たことがないと思うので、近々観たい。

パンフ820円
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