ベンジャミンサムナー

レ・ミゼラブルのベンジャミンサムナーのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.5
 最初に予告編を観た時、ドキュメンタリー映画かと思ったくらい臨場感が凄まじく、むき出しの怒りと憎悪にただただ圧倒させられた。

 治安の悪い地域では、警察も移民たちも自分を守る為に高圧的になるしかない。
 だが、そうすることでまた新たな暴力の火種が生まれるという負の連鎖。
 この状況を元から断ち切るにはどうしたら良いのだろう?

 終盤、これで終わりかな?と思わせてからの『爆裂都市』を超える勢いの暴動シーンが圧巻。
 大人同士は罵詈雑言の応酬で一触即発だが、かろうじて一線は保ってるのに対して、その様子を見てる子供たちは歯止めの効かない暴力を炸裂させる。
 子供の純粋さが悪い方向に出てしまったのだろう。

 警官も移民だし家庭を持ってることを描くことで、『ナイチンゲール』同様「移民とネイティブ」や「白人と黒人」といった二項対立を越えた普遍的な内容になっている。

 最初は相手を牽制するために暴徒鎮圧用のゴム弾や催涙スプレーを突き付けているが、そういう行為が重なって最終的には火炎瓶と実銃を向け合いどちらかがどちらを殺すところにまで行ってしまうラストに、月並みではあるが「暴力は何も解決しないなぁ」としみじみ思う。