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家族を想うときのkrdbのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.1
引退宣言したケン・ローチが撤回してまで撮りたかったその憤りが伝わるような作品。本作のテーマは仕事。個人事業主、フランチャイズで仕事を請け負う男とその家族の話。会社に縛られず自由に仕事をする、聞こえはいいけど実情は完全な自由などなく労基法など完全無視、保険も保証もなく、もし自分の身に何かあれば収入が途絶える不安定な身。それに加えて妻は介護職、こちらもかなり過酷な現場。社会には搾取する側と搾取される側があり、後者を救済するはずの社会制度からも漏れてしまった人たちが送る生活というのをリアルに描いていた。テーマは社会派バリバリだが、説教臭くなく、例の如くうまくヒューマンドラマ要素を絡めてなんとも切ない作品に仕上がっている。特に高校生の息子のセブの微妙な感情の揺れの表現が何とも絶妙、なぜローチはこの世代の心情を描くのがこんなに上手いのか。本当に素晴らしい。もう80歳を越えて足元も少しおぼつかないようだけど、100歳まで撮り続けて欲しい。
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