このレビューはネタバレを含みます
映画は大きく二つのカテゴリーに分けることができる。
「元気が出る映画」「元気がなくなる映画」に分けた場合、殆どの人が後者に当てはまると思う。
鑑賞した人に対して家族・仕事・幸せについて、深く考えさせられる映画である。
イギリスのニューカッスルで暮らす家族の物語。
夢のマイホームを購入するため、新たに宅配ドライバーの独立に挑戦する父。家族のために挑戦し、幸せを掴むための仕事のはずが、1日14時間。週6の勤務で身体はボロボロになり、家族の距離も離れていく。
母は父の宅配用の大型バンを購入するため、パートで使用していた車を売られ、バスで通うことになるが、過労と移動に疲れてしまう。
長男は親と会えない時間が増え、グレてしまい、喧嘩や万引きなどに手を出してしまう。
家族のための仕事が、家族の壊すように動いていく。。。
正直見ていて辛くなる映画であるが、ウーバーやアマゾンの宅配サービスが世界を支えて、雇用形態も変化しつつある今、他人ごとではない物語である。
シーンが進むことに、悲しい気持ちが増してくる。特にラストシーンの身体がボロボロになり、家族が止めても仕事に出ていくシーンはイかれている。
イかれているが、現実なんだろう。
監督ケン・ローチは前作の「私はダニエル・ブレイク」を最後に引退を表明したが、イギリスの労働環境を見て、今作を作るために引退を撤回したらしい。
何事も初心に戻ることが大切だと気づかせてくれる。そもそもなんの目的をもって、物事を選んだ・判断したのか。そして、それを選んだ結果、希望していた現実へ歩めているのか。歩めていない場合は、どうすれば近づけるのか。
圧倒的に負の現実を突きつけてくる映画であるが、今生きている人だからこそ見てほしいと思う一作。