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リトル・ジョーのShinMakitaのレビュー・感想・評価

リトル・ジョー(2019年製作の映画)
2.0
バイオ企業「プラントハウス」で働く研究者アリスは、夫と離婚し思春期の息子ジョーを育てていた。いま彼女は、相棒クリスと新種の花〈リトルジョー〉を開発している。遺伝子操作で作られるリトルジョーは、厳格な温度管理や水やりで育てなければならないが、成長するといい匂いを発し、育てる者のオキシトシンを分泌させる。人をハッピーにさせる花、というわけだ。品評会に間に合わせようと研究室で残業の毎日を送るアリス。そんなある日、彼女の同僚ベラが、「リトルジョーの花粉を吸った飼い犬がおかしくなった」と言い出した。ネイチャーの論文を持ち出し、花粉に含まれるベクターとして用いたウイルスが嗅神経に感染、前頭葉を侵すというのだ。そんなバカな、と最初は取り合わなかったアリスだったが…


「リトル・ジョー」

以下、ネタバレ・ジョー

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植物が人間を支配する話、というと、すぐ思い出すのがフィニィの「盗まれた街」。これをやたらと映像化したボディスナッチャーと名がつく作品群ですね。本作もその亜流ですが、ちょっとテイストが異なります。
まず、リトル・ジョーは宇宙生物ではなく人工植物。遺伝子操作で自然交配ができない花なので、種の保存のために人間を支配するわけです。その支配とは、「リトル・ジョーを第1に考えるようにする」もの。

…ん?

…だから?


と言いたくなるほど、ハタから見ても判らない程度の支配。凶暴になるわけでも感情が消えるわけでもありません。SFホラーとして怖い部分は無いのです。しかもオキシトシンが出るから、花粉にやられたら多幸感しかないわけですよ。

みんなハッピーになるなら、それでいいじゃん^_^


と思ってしまうところに恐怖があるのです。一つの価値観、一つの思想に皆が「感染」してしまったら…多様性が認められない社会になってしまったら…そんな怖さのメタファーだと思うんですよね、リトルジョーって。

この映画、不気味な色使いと不思議な音楽も特徴。特に音楽は、完全な和テイスト。和太鼓や尺八、琴のサウンド…祭囃子や雅楽がホラーの雰囲気を醸し出しているんです。クラクラするような監視カメラの映像も含めて、いかにもSFホラーな外見なんですが、ボディスナッチャーよりも遥かに現実的で遥かにゾッとさせる作品。オススメです。
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