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マティアス&マキシムのSPNminacoのレビュー・感想・評価

マティアス&マキシム(2019年製作の映画)
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並んだ赤と青はゴダール、序盤はちょっとロメールの会話劇を連想。マリファナと他愛ないゲームであんなに盛り上がれるボーイズは、どういう人たちなんだろう、いくつの設定なんだろうと不思議だった。マキシム以外は比較的裕福なお坊っちゃまらしく、呑気でどこかお行儀が良い。
その中で大人っぽく落ち着いたマティアス(マック)とオーストラリアへ旅立つマキシム(マックス)は、明らかに向いてる方向が違う。枯れた植物を見過ごせず言葉を受け流せないマティアス、荒んだ母を見捨てられないマキシム。2人とも優しさゆえの苦労性。窓枠で切り取られたフレームでは親密で、カメラが隔てた距離は気不味い。
ドラン映画はいつも対話と理解を求める物語だ。言葉にしないと伝わらないから、まず話がしたい、話してほしい。けれどいきなりキス撮影で始まり、母親に拒絶され、頼まれた推薦状を渡さず、スピーチは言葉が出ず、英語は拙く、電話は一方通行、3回出てくる内緒話はどうでもいい話で、コミュニケイションは悉く分断される。ならば諦めて受け流すのが大人かもしれないが、2人はまだ大人になり切れていないのだった(逆に揉め事をスルーできる仲間の方が実は“大人”)。
とはいえ、場面場面は非常にエモいのだけど、重々しく大仰に悩む割りに脚本が漠然と表面的だ。前提となるそれまでの関係に掴み所がないまま、内に篭って悶々とするばかり。ドラン演じるマキシムの母親と家の生活感だけはやけに生々しかったけど、どちらか主体を絞った方がすっきりわかりやすいはず。覚悟を決めてるマキシムに対し、マティアスが何を吹っ切ったのか見えてこないから。友情の描き方も薄っぺらい。
またしても厄介な母親、劇的な場面で枯葉とか雨が降ってくる演出。ガブリエル・ダルメイダ・フレイタスの憂いある顔が色っぽく撮られてるが、それ以上に特別ゲスト待遇でキラキラ撮られたハリス・ディキンソン。そして『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』と同じく、最後だけはてらいもなく爽やか!ただ、結局言葉はいらないのか…って当人以外は蚊帳の外に置かれたままですっきりしなかった。
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