ようやくグザヴィエ・ドランにたどり着き、実は初めて観たドラン作品。若くして才能溢れる、人気も高い監督(俳優)というのは知っていたが、何となく観る気にはならず…ひょんなことからまずはこの作品を観てみたら、本人と彼の作る映画から漂う、触れるだけで壊れてしまいそうな雰囲気、繊細さを感じ、好きかどうかは別としてかなり胸に突き刺さるものがあった。
このようなコミュニティに属したことはないが、自分もそこにいるかのような空気をずっと肌で感じるようだった。地元の友人たちとの群れや家族(母親)との関わり方、変わらない安心感がある一方で、同時に煩わしく思ってしまうところもあったり、言葉や態度に出していいことと悪いことの境界線が曖昧になってしまったりすることだってある。
会話などアドリブはなく全てが計算されたものだとどこかで見かけたが、その場にいるかのような感覚に陥る自然さだった。
何度も繰り返し観たくなるような印象的なシーンに溢れながらも、切り取り方や内容はむしろもっとずっと日常的で現実感があった。
どこかで煩わしくもある日常や人間関係の中で、こんなにもすぐ近くに美しくてかけがえのない瞬間が驚くほど溢れているということに改めて気が付く。
うんざりしてしまうような会話や出来事が多い中で、ふとした瞬間に感じる、人としてのさりげない優しさみたいなものが心に残る。途中、突如現れたマカフィの存在が何故かとても好きだった。
好きかどうかは分からないと思ったが、とても惹かれるので他の作品も観てみたい。