真魚八重子

アトランティックスの真魚八重子のレビュー・感想・評価

アトランティックス(2019年製作の映画)
4.5
最初の黒人女性監督が、パリ出身のマティ・ディオプ。父はセネガルのミュージシャン、叔父もセネガルの名匠といわれる映画監督なので、芸術一家出身。

貧しい青年スレイマンと愛し合うアダは、もうすぐお金持ちに嫁がされるのが決まっている。町の男たちは同じ職場で給料の未払いに苦しみ、社長に詰め寄って直談判もするが、社長は突っぱねる。アダの結婚の直前、スレイマンも含む男たちは、急に船でスペインに出稼ぎに行ってしまう。

ここから映画は不思議な怪異譚となっていく。夜になると白目になった女たちが社長の家に押しかけたり、アダの初夜のベッドが自然発火したり、おかしなことが続く。その捜査をする刑事も体調がおかしい。

これもまた、マジックリアリズムといってよいと思う。怪異譚といっても怖いわけではなく、不思議な現象が現世に当然の顔をして共存している感覚なのだ。ファッションも音楽もアフリカンで魅力的だし、海の家のようなバーが幻惑的な照明で雰囲気があっていい。
真魚八重子

真魚八重子