一番好きな監督であるダルデンヌ兄弟だけど、
かなり映画館行くの難しい時期だったこともあり、
今作は公開されてることも知らなかったなー。
どんな作品か知らずに見始めたけれど、
ずっと社会問題に鋭く切り込んできたダルデンヌ兄弟だけに
このご時世にムスリムの少年を主人公にした作品を撮ることにはすんごい必然性を感じたし、
日本に住む我々には見えにくいけれども、
たしかにこんな感じだろうなと理解できた。
例のごとくアメッドがなぜ急進的な考えに魅了されていくのか、
環境的な要因は示唆される程度なのだけど、
思春期特有の抑圧や疎外感が間違いなくあって、
とにかく解放されたいのだという意思だけはビンビンに伝わってくる。
しかし「導師」たる大人の無責任さに加えて、
ムスリム全体に対する社会的な抑圧もまた確かにあり、
ムスリムであるがゆえの生きにくさが悲痛な悪循環を招いていく展開は、
見ていて本当に痛々しくて苦しい。
これぞダルデンヌ!
ムスリムであること自体を否定せず、
その生活スタイルを尊重した更生施設は、
ムスリムに特化したものでたるわけではないのかな?
ただいずれにせよ、農場で少年は変わらない。
でも少女との恋ゆえに揺れる。
しかし、社会にいまあるシステムでは少年は変わらないんだというラストは後味が悪い。
共生って本当に困難であり、
家族でさえもわかりあえない中で
導師が逮捕された現実に向き合うことって可能なのか?
とにかくこの主人公の頑なに閉じた表情、
信じきっている祈りの強さに
あー本当に我々が突きつけられた問題の難しさを痛感した。
すごい。