Narumi

マイリトルゴートのNarumiのレビュー・感想・評価

マイリトルゴート(2018年製作の映画)
5.0
恐ろしく悲しい物語だ。
七匹の子山羊を「もし、腹の中で消化が始まっていたら?」という想定で描く。

腹の中で消化され長男は死に、辛うじて無事の兄弟も消化で見た目が変わり果てていた。
その姿を見ないよう母ヤギは鏡を隠している。
そして長男の死を受け入れられない母ヤギは、心を病み人間の少年を誘拐し長男だと思い込む。

家に来た狼は少年を連れ戻そうとする実の父親だったが、スタンガンで母ヤギに気絶させられた後の姿で、息子に何をしてきたかを見る側にハッキリと明示した。

この作品は、被害者のその後の話にも思える。
創作の中で平気で不謹慎を鑑賞出来るのは、腹から無事に子ヤギが出てきたおとぎ話のように、物語の中では被害者の残酷なその後が表現されないことが多いからだ。

作中では、子ヤギが鏡にうつった自分の変わり果てた姿を見てしまい驚き嘆くシーンが出てくる。
死なずとも、子ヤギたちは食われた事実を受け入れるのが辛く、兄の死を受け入れるのが辛く、自分の見た目を見つめるのが辛い。
命は無事でも、狼の行為は確実にヤギたちの生活を陰らせた。
狼と重なる父の姿。男は狼とも言われるが、子ヤギを性被害者と捉えることもできる。

今一度、不謹慎を消化するということがどういうことなのか自戒を忘れないようにしたいと思う。
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