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チャーリー・セズ / マンソンの女たちのSPNminacoのレビュー・感想・評価

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所謂マンソン・ガールズを主体とした映画。ファミリーに加入した“ルル”の視点で事件に至るまでの過程と、刑務所の特別房に収監されたその後が並行する構成。未だチャールズ・マンソンの洗脳が解けないルル、ケイティー、セイディの言葉に、教師カーリーンはじっと耳を傾ける。マンソンと出会う前の自分を取り戻してほしいが、それは一生の罪を背負うことでもある。勿論罪は罪だけど、どちらにしても残酷。ある意味ガールズは他の女性受刑者と同じように、虐待による犠牲者でもあると捉えられる。そしてそれはいつどこででも起こり得る。
コミューンで連帯する若い女性たちは外の社会を拒絶し、ウーマン・リヴ運動の社会で連帯するカーリーンは、事件後社会に拒絶されたマンソン・ガールズに手を差し伸べる。幻想の連帯の末路は、冒頭で引用されるジョーン・ディディオンの「60年代は1969年8月9日に突然終わったと信じる者が多い」という言葉が端的に物語っている。違う道も選べたかもしれないけれど、失われたものは戻らない。映画はやりきれない思いに寄り添いながら、若く苦い時代を容赦無く見つめ直すのだった。
マット・スミス演じるマンソンは、ガールズが求めた「理想のパパ」の薄っぺらい虚像であり、幼稚な暴君だ。Loveの“The Red Telephone”が流れ、当時の生暖かい空気を感じさせる撮影、ハンナ・マリーのイノセントな眼差し。何と言っても、カーリーンの毅然とした良心と奥深い人間性が静かに滲み出るメリット・ウェヴァーがほんと好き。
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