ラグナロクの足音

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方のラグナロクの足音のレビュー・感想・評価

3.9
ロサンゼルス郊外にある東京ドーム約17個分のやせた土地を、自然と共存した豊かな農場に変えていく8年間のドキュメンタリー。夫婦が里親となった黒いワンちゃんを筆頭にどんどん「新たな家族」が増える一方でトラブルも増えていくが、それらを乗り越えていく2人から「本能的な人間の強さ」さえ感じる。コントロールできない自然を相手にしているため、思いもしない状況が常に生まれる臨場感が、通常のドキュメンタリー映画と一線を画す本作の魅力である。困難は自然だけではなく、夫婦に知恵を与えていた唯一のアドバイザーである師匠が歳を重ねて弱ってしまう切ない状況でも生まれる。それらの困難に夫婦は、自分たちの理想の実現に向けてどのように立ち向かっていくのか?「オーガニック」という美しい響きからは程遠い「過酷な現実」の課題にぶつかっていく綺麗事無しの本作だからこそ、夫婦の絆や自然の厳しさ、それらを乗り越える瞬間がその都度心に響く。本作を見ることにより、日常生活では目を伏せがちな「自然の調和による、時には残酷な理想と現実」が垣間見える。思わぬトラブルにぶつかり続けながらも笑顔を絶やさずに常に自然と向き合う8年間の現実だからこそ、地球(自然)と人間(生命)のあるべき姿などをより深く考察するきっかけにもなる秀作。
ラグナロクの足音

ラグナロクの足音