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ウルフズ・コールのmaverickのレビュー・感想・評価

ウルフズ・コール(2019年製作の映画)
3.9
2019年のフランス映画。『おかえり、ブルゴーニュへ』のフランソワ・シヴィル、『最強のふたり』のオマール・シー、『ルートヴィヒ』のパウラ・ベーアが出演。セザール賞で3部門にノミネートし、音響賞を受賞した。


フランス映画には珍しい潜水艦映画。いかにもB級っぽいジャケットで不安だったが、それなりに楽しめた。ただしミリタリー系に興味がない人には微妙な作品かも。主人公とヒロインのロマンスはあるが、ラブストーリー性はあって無いようなもの。仲間との友情を描く部分も薄く、人間ドラマとしての魅力には乏しい。社会情勢を踏まえ、危機感を抱かせる点においてはそれなりの見応えがある。日本の自衛隊も潜水艦を多数保有しているが、本作からその必然性も感じることと思う。

フランス海軍が全面協力しているだけあり、リアリティは半端ない。潜水艦映画の醍醐味は、お互いに見えない状況での探り合いにある。その点においては申し分ない出来。近代化兵器を駆使しての水中戦は手に汗握る。CGを駆使した演出もクオリティが高いし、緊迫感があって盛り上がる。ミリタリー好きにはたまらない作品だ。

主人公が艦長ではなく、ソナー担当員なのも面白い。軍人だけど繊細な性格で、他のクルーの中では優男系。でも音の分析に関しては天才的だし、オタク気質なこだわりで突っ走るやんちゃな性格も持ち合わせる。多くの作品でソナー員はモブ的な扱いなのに対し、本作ではそれを主人公が担うというのは見事な発想だ。

ヒロインが添え物的にしか登場せず、だったら出さなくても良かったのではと思う。バーのシーンは『トップガン』のオマージュだし、あれがやりたかったんだろうけど。出会っていきなり情事に発展する二人の関係性は安っぽいが、あれがフランス的なのかもしれないな。


ミリタリー要素で加点。アメリカ映画ではロシアが敵だが、フランスもそうなのかと興味深い。現代の世界情勢にも通じる内容はリアルである。平和を守る任務に就いている人達には感謝しかない。ラストは感動だった。
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