スチールラグ

朝が来るのスチールラグのネタバレレビュー・内容・結末

朝が来る(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ちゃぷちゃぷ。
柔らかな水の音から物語は始まる。

「海が守ってくれているみたいでしょ」
できることなら、守ってほしい。
彼らを、あの子達を。

佐都子が慈愛に満ちている。
家庭も愛にあふれている。
そして、時間をかけて家族になる覚悟がある。
こんな家で育つ子どもは幸せだと思う。

一方、初めて子どもを胸に抱くひかり。
母性を実感した瞬間。
愛おしくてたまらなかったと思う。
そして、精一杯のあの手紙。
でも、名前は付けられない。
養父母に深々と頭を下げて見送るまで、
彼女も慈愛に満ちあふれていた。

愛にあふれ、子どもの幸せを願う二人。
両者を分けたのはなんだったのだろう。

「なかったことにしないで」
親が子を選ぶのではなく、
子が親を選ぶ。
小さな命を守る。
もちろん、大切な仕組みだけど、
幼いひかりは、それをしっかり、
飲み込むことが出来ただろうか。

「まだ子供だろう」
なかったことにしようとする大人達。
少女の将来を願ってとはいえ、
ちっとも大事にされない彼女の気持ち。
親戚から望まぬ慰めを掛けられ、ひかりが怒り狂う。

ひかりを演じているのが、蒔田彩珠だっただけに、
どうしても、「透明なゆりかご」と想いが重なる。
お腹に手を当て、桜を見上げるあの表情。
「誰か、誰か」と助けを求めながら必死で自転車を漕ぐあの姿。
彼女もひかりも何とか救う手だては無かったのかと思う。

全てを失ったひかり。
再び、夫婦の前に現れる。
床に頭を下げてわびるその姿がつらくて涙が止まらなかった。

物語の最後の、我が子の言葉に、ひかりが、夫婦が、
救われたことを心から願う。

慈しみと赦しと救いの物語。
スチールラグ

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