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BEYOND BLOODのTのネタバレレビュー・内容・結末

BEYOND BLOOD(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

「ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー」が、その作家である監督自身やプロデューサー、映画評論家らによってインタビュー形式で多角的に語られるドキュメンタリー。

スプラッター映画の原点と言われるグランギニョールなどがありながらホラー映画が珍しかったフランス映画の歴史的文脈。「ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー」におけるエクストリームな暴力表現の必然性。底意。アメリカ人目線で語られるアメリカン・ホラーとの比較。

インタビュイーの見解に完全な整合性があるわけではないところには、異なるバックグラウンドを持つ彼らの各々の見方が表れていて一意見として学ぶところがあったし、ほぼ完全な一致が見られるところには、「ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー」が直面する事象・歴史的事実といったような重みが感じられて興味深かった。

僕が初めて観たフレンチ・ホラーは、「ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー」という動きを知らないまま何気なく観た『RAW』だったのだが、この作品がこの流れの中でどのような位置づけをされているのか知ることができて、驚いたし、嬉しかった。それに、推しメンであるジュリア・デュクルノーとコラリー・ファルジャの女性監督としての重要性も語られていて有り難いばかりだった。涙が出る。

関係ないけど、「ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー」が母国フランスで一般的にあまり認められていない(改善されてきているようだが)という事実について満場一致で憤りを示していたことには、同様の、或いはもっと深刻な、映画に対する国民の見方に関する課題が日本にもあるのではないかと思った。個人的には、よくある漫画の実写化映画は基本的にエクスプロイテーション映画みたいなものだと思っているので、現代の日本映画へのグローバルな意見も聞きたいなぁなんて思った。

このムーヴメントのドキュメンタリーであることだけで価値がある。欲を言うなら、ジュリア・デュクルノーへのインタビューも見たかった。
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