名波ジャパン10

Winnyの名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

Winny(2023年製作の映画)
4.3
非常に複雑な要素が絡み合うWinny事件の本質を鮮やかに描き切った傑作。4年の歳月を費やして全裁判記録を読み込んだ松本優作監督の執念と18kgの増量までしてWinnyの開発者金子勇を見事に再現し切った東出昌大の役者魂が結実した作品となっています。Winnyは暗号化されたファイルをバケツリレー的に転送する方式のファイル共有ソフトウェアで、現在の仮想通貨などで用いられているブロックチェーンの先駆けとなった技術です。他のソフトウェアに比べて匿名性が高いことが特徴になっています。元々は言論弾圧の下で自由な発言や告発の手段として用いられることを目的としていましたが、その匿名性故に著作物の違法な配布やコンピュータウイルスの拡散の手段として利用されることになりました。Winnyを用いた著作権法違反の摘発が行われた際にその幇助として開発者の金子勇氏が逮捕されたのがWinny事件です。著作権法違反の実行犯と面識もないどころか全く接点のないソフトウェア開発者に幇助罪が成立するのかという争点を巡っての裁判と一見関係のない愛媛県警の裏金疑惑という事件が並行して描かれ、この作品に厚みを加えています。弁護団の弁護士達が実物大のカッコ良さで、この描き方も良い。彼らは何の為に最高裁まで争ったのかは是非劇場で確かめて頂きたい。お薦めです。